世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)はこのほど、微小粒子状物質「PM2.5」など大気汚染物質の発がんリスクを、全5段階のうち危険度が最も高い水準に引き上げたと発表した。これらの大気汚染物質は発がんの主な環境要素であり、同時に人の呼吸器疾患や心臓病のリスクを引き上げるという。記者は権威ある専門家を取材し、市民が関心を寄せる問題について答えてもらった。光明日報が伝えた。
◆環境・暮らしに関する肺がん発症率・死亡率が上昇傾向
IARCは、中国などの新興国・開発途上国において、大気汚染問題が日増しに深刻化していると強調した。大気汚染が肺がんを引き起こすことは、十分な証拠によって示されている。2010年には世界の約22万3000人が、大気汚染による肺がんで死亡した。
人々は大気汚染が健康を損ねることについて理解している。報道によると、中国の約10億人が微小粒子状物質の漂う環境で生活しており、6億人の生活環境に存在する二酸化硫黄が基準を超過しているという。別のデータによると、中国では毎年、都市部の大気汚染による呼吸器疾患で診断を受ける患者数が35万人に、急診を受ける患者が680万人に達している。大気汚染による環境・健康の損失は、中国のGDPの7%を占めるという。
中国国家衛生・計画生育委員会の調査からも、環境・暮らしに関する肺がんの発症率・死亡率が明らかな上昇傾向にあることが分かり、過去30年間で465%上昇した。肺がんは肝臓がんに代わり、中国の悪性腫瘍による死亡の主因となっている。中国工程院院士の鐘南山氏は、「粒径が5マイクロメートルであれば、気管・気管支に達する。1-3マイクロメートルであれば肺胞に達し、永遠に肺胞の中に留まることになる」と指摘した。またこれまでは喫煙が発がんの最も重要な要因であるとされていたが、今や大気汚染の影響も侮れなくなっている。なぜなら肺がんの発症率が大幅に上昇する中、中国の近年の喫煙率は横ばいになっているからだ。それに都市部と農村部の喫煙率には大きな差がないにも関わらず、都市部の住民が肺がんにかかる比率は農村部の2-3倍に達しており、特に都市部の非喫煙女性が肺腺がんにかかる比率が大きく上昇している。
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