これについて周教授は次のような見方を示す。日本には資金がないわけではなく、五輪が成功すれば日本経済にも一定の振興作用をもたらすが、牽引作用はそれほど大きくない。たとえば、日本の施設は整っており、新たに建設するものは多くない。総じていえば、08年の北京五輪が中国経済を大きく牽引したようなことにはならない。事実、五輪の経済牽引効果は保証されているわけではない。76年開催のモントリオールは06年まで五輪で抱えた巨額の債務を返済し続けていた。04年アテネ五輪の閉幕後、ギリシャは経済危機の悪夢へ一歩一歩突き進んでいったとの見方もある。より重要なことは、外祖父の首相就任当時とは異なり、安倍首相が直面しているのは弱体化した日本経済だ。60年代に成長への道を歩み始めたばかりの日本経済ではない。
▽実は政治的な目的がある?
中国現代国際関係研究院の田文林博士によると、安倍首相が五輪の立候補申請を積極的に後押しするのは、実はそこに隠された政治的目的があるからだという。田博士は次のように説明する。一方で、安倍首相は五輪立候補をよりどころとして、アジアでの孤立情況を緩和し、人々の注目を日本に集めようとしている。また一方で、これまでずっと政治の干渉を受けないとされてきた五輪によって、日本と中国や韓国などの隣国との緊張関係を緩和しようと考えている。また五輪を契機として、経済の持続的な発展を目指す態度を明らかにし、有権者の支持集めにプラスに作用させようとしているという。
韓国紙「朝鮮日報」の分析によると、アベノミクスを構成する3本の矢は、現時点では順調に実施されているが、日本にとっての急務は日本経済を一瞬で変化させるような効き目の高い注射を打つことだ。安倍首相が目標を五輪に定めたことは明らかだという。
だが安倍首相の勝手なもくろみには大きな欠陥がある。東京電力の福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故に対する人々の懸念だ。周教授は、「これこそが日本での五輪開催に影響を与える最も大きな問題だ。すべての人に安全への懸念をなくさせることは不可能だ。相当長い期間にわたり、この問題が議論されるかもしれない」と話す。安倍首相は同原発の汚染水の問題について、同原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされているとの見方を示す。(編集KS)
「人民網日本語版」2013年9月10日
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