中国についていえば、中期的にみると、円安が生み出した外部リスクが人民元の将来にとって重大な脅威となる。過去数十年間と異なるのは、現在の日本のハイエンド電子製品、自動車、工業製品が韓国、台湾地区、大陸部といった近隣の経済体と直接競争を繰り広げているということだ。こうした状況により、東アジアの他の経済体は自国通貨のレートを低く抑えるよう迫られる可能性がある。東アジア地域でほぼ唯一の弾力性を欠いた通貨である人民元のリスクが著しく拡大し、さらには13年の中国の経常収支にとって大きな圧力となる可能性がある。
中国人民銀行(中央銀行)のレート政策は両側からはさまれてバランスを取ることが難しい。経常収支を支援しようとすれば、人民元の勢いを弱めて「円安+ドル高」に対応しなければならなくなる。背後に忍び寄る経済バブル(不動産バブル、生産能力バブル)に対処しようとすれば、人民元の勢いを強めなければならず、人民元レートに値下げのルートが形成されてしまえば、資産価格が急速に低下し、国内の貸し出し引き締めの圧力が増大することになる。過去10年間には人民元の貸し出しは資産価値の上昇を前提として拡大しており、人民元資産の価値の縮小は貸し出し条件が目立って高まったことを意味し、そこから巨大なデフレ効果が生み出され、さらには経済の減速と人民元へのより強い値下げ圧力をもたらすことになる。
「虚栄の炎」である人民元の勢いの強さは、「慢性的な毒薬」だといえる。経常収支の黒字状況を悪化させ、最終的には資本の流出を劇化させる可能性があるからだ。中国経済が予定より前倒しして主体的にペースダウンをはかり、人民元レートに弾力性を与えるなら、人民元は今後、圧力を緩和することが可能になる。これは政策決定層が経済のペースダウンを実施する勇気と決意をもてるかどうかによって実質的に決めることだといえる。(編集KS)
「人民網日本語版」2013年5月28日
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