作家・村上春樹氏の著書「ねむり」と「雑文集」の中国語版がこのほど、中国で出版される。日本の著名な近現代中国文学者・藤井省三氏(東京大学文学部・大学院人文社会系研究所教授)や翻訳家の施小●氏、および文学者・散文家の止庵氏が出版記念イベントに出席し、会場でゲストたちと村上春樹作品について語った。藤井氏は村上春樹の研究者であると同時に、莫言氏の小説の日本語翻訳者でもある。藤井氏によると、村上春樹氏と莫言氏は全く異なるタイプの作家だという。「北京青年報」が伝えた。
藤井氏は、1989年に発表された村上氏の小説『眠り』とほぼ同時期、に莫言氏も短編小説「花束を抱く女」(中国原題:懐抱鮮花的女人)を発表していることに触れた。両作品に登場する主人公がいずれもロシアの作家トルストイの長編小説のアンナ・カレー二ナを彷彿させると指摘し、「村上氏と莫言氏はまるで違うタイプの作家であるにもかかわらず、これらの小説を発表するタイミングや、トルストイの『アンナ・カレー二ナ』に影響されて自分の短編小説を執筆したことなどが共通しており、この偶然性が非常に面白い」と語った。
中国語版の翻訳について、藤井氏は「林少華氏(中国海洋大学教授)の翻訳は比較的『同化翻訳』(文化的差異を感じさせない、比較的すらすら読める文体)を好む傾向にあり、外国語を自分たちの国の言葉に改編しようと試みているのに対して、施小●氏(上海杉達学院大日本文学科主任教授)の翻訳は、『同化翻訳』よりも『異化翻訳』(起点文化の独自性を保つ「違和感のある翻訳」)する傾向にあり、外国語が持つ語感を中国語で表現しようとしている」と独自の意見を述べた。
これに先立つ今月12日、文芸春秋社は村上春樹氏の長編小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(中国語仮題:没有色彩的多崎造和和他的巡礼之年)を出版すると発表した。ある評論家は、非常に長いタイトルだが、タイトルのどの部分を切り取ったとしても、原作の内容とはかなりの開きがあるだろうと考えている。現在、本のタイトルを見ただけでも、村上氏の新作にはいったい何が描かれているのか読者たちの好奇心は非常に高まっている。(編集MZ)
*●火へんに韋
「人民網日本語版」2013年3月20日
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