中国は、全面的な「小康社会」(多少ゆとりある生活ができる社会)を構築するプロセスの中で、「エコ文明」を築くという考えを明らかにし、この概念を党大会の政治報告の中に初めて明記した。
10月15日、第16期中央委員会を代表し、第17回党大会へ向けての政治報告を行った胡錦涛総書記は、全面的な「小康社会」の実現に向けた努力を求め、その中で「エコ文明を築き、省エネ・省資源で生態環境にやさしい産業構造、成長パターン、消費モデルをそれぞれ基本的に打ち立てる必要がある」と述べた。
このことは、中国が新たな発展段階において直面する特徴的な課題を解決するのにプラスになると見られている。国家環境保護総局が先ごろ発表した報告によると、中国の総体的環境は依然として「かなり深刻」であり、多発する汚染関連事件が人びとの暮らしに影響を及ぼしている。
今年5月、華東地区で発生した太湖の水質汚染事件は人びとを震撼させた。経済発展の追求に明け暮れ、大規模な化学工業と軽工業が発展した結果、水質汚染を引き起こし、200万人の生活用水が断たれることになった。
胡錦涛総書記は、循環型経済を大規模に打ち立て、再生可能エネルギーの比率を著しく向上させるよう求め、具体的には、主な汚染物質の排出を効果的に抑制し、生態環境の質を改善すること、エコ文明という概念を社会全体に定着させることを求めた。
中央党校の哲学部副主任である韓慶祥教授は、党大会報告でエコ文明という理念が示され、環境汚染が批判され、反省され、人と自然の調和のとれた共生関係が強調された、と見ている。
同教授はさらに、中国の「エコ文明」の中身について次のようなものであると指摘した。生活の質を持続的に向上させ、環境にやさしい省エネ・省資源の社会を築き、持続的発展ができる力を絶えず強化することである。そのほか、物質文明と精神文明は、エコ文明を実現するための基礎であり前提であって、逆にエコ文明は、物質文明と精神文明のさらなる前進にプラスとなる。
胡錦涛総書記の報告は、党の代表らの間で強い反響を呼んだ。「これは、エコ文明が中華民族の生存にとって大きな意義を持つことを示している」と語る国家環境保護総局の潘岳副局長は、「この理念は政治的には、経済発展のカギであり、暮らしの窓だ。そして文化的には中国の伝統的価値観と一致し、中国が責任を負った大国であるというイメージを示したものだ」と指摘した。
中国工程院のアカデミー会員でチベット自治区地質鉱産調査開発局局長の多吉氏は次のように語った。「実際に、青蔵鉄道の建設であれ、チベット鉱物資源の開発であれ、生態保護はわれわれが真っ先に考えるべき大切な問題だ。しかし、“エコ文明”がこのような形で提起されたことは、全党の理論構築がこれまでのやり方からレベルアップしたもので、前代未聞のことだ」。
実は、中国政府は早くも1990年代の半ばに、エコ文明に言及し始めていた。1999年、当時の温家宝国務院副総理は、「21世紀は、エコ文明の世紀」と述べた。しかし、さまざまな理由で、長期間にわたり多くの環境保護対策が着実に実行されてこなかった。
広東省代表で中国科学院南海海洋研究所の研究員である王東暁氏は、次のように語る。「報告の中のエコ文明という理念は、自然に対し消極的になり何も手を加えないよう求めるものではなく、産業発展や経済成長、消費モデルの改革プロセスの中で、可能な限り、積極的かつ主体的に省エネ・省資源と生態環境保護を行うよう強調するものだ」。
経済発展地区である広東省では、省資源、汚染処理、産廃削減が現地における経済成長パターン転換の突破口となり、2006年には、製造業で世界に名だたるこの経済大省のGDP創出1万元当たりのエネルギー消費量は、0.771トン・標準炭となり、2005年比で2.93%減少した。 しかし、一部の地域ではこの概念のいっそうの強化が待たれている。
この提案は海外からも注目されている。イタリア「ラ・リパブリカ」紙の北京駐在記者は、「EUは、中国が環境保護において果たす役割に関心を深めている。汚染と気候の変化は全地球規模の問題であり、中国の関与がなければ解決は難しい」と語った。
ドイツ紙の記者は、「政治報告で言及された環境の話題に非常に関心を持った」と語った。 AFP通信は、胡錦涛総書記の報告の中から、この話題を特に取り上げ報道する中で、中国の経済発展は今、コスト高の難局に立ってはいるが、やさしい環境づくりへ向けて踏み出した、と紹介している。
「北京週報日本語版」 2007年10月17日 |