2004年、「日中友好元軍人の会」主催の講演会(段躍中提供)
「こうした元日本兵が残した証言は大変貴重なもので、どれも実際に経験した者だけが口にできる心の奥底から出た言葉だ。しかし元日本兵たちはどんどん少なくなっている」。段躍中氏の声は沈んだ。「日中友好元軍人の会は毎年7月7日に講演会を行っている。毎年、全員がまず起立してこの1年で亡くなった元兵士に黙祷を捧げている。証言はますます少なくなり、記録はますます難しくなっている」。
段躍中氏は、「元軍人の会」発行の『8.15』にはISBNコードがついておらず、保存管理がしにくいことを残念に思った。そこで段氏はそれらを合本にし、反戦平和・世代友好シリーズ『8.15』として正規出版し、貴重な資料を日本の流通システムと図書館システムに乗せて閲覧や収蔵ができるようにした。
段躍中氏は、「この『分厚い年鑑のような』シリーズ書は売れる本ではない」と率直に語る。「出版資金は全て僑報社が負担し、ほかの本を出版することでなんとかやっている。でも、歴史を記録するという責任感から、1年に1冊のペースで作り続けてきた」。
「日中友好元軍人の会」が編集発行した月刊機関誌『8.15』(段躍中提供)
「多くの元日本兵は、心にしまっておいた想いを死ぬ前に話したいと思っている。ただ、注目されることほとんどない。塩谷さんは今年94歳と高齢で、ほとんど話ができなくなってしまった」と段躍中氏は言う。「中国を侵略した元日本兵の証言を世に出すことは、日本僑報社だけでできる作業ではない。日本には、経済的な見返りがないのに、良心によって反戦活動をしている学者や作家もいる。もっと多くの見識ある人々が反戦シリーズの出版を支持し、歴史研究のために詳細な記録を残すことを期待している」。
今年9月3日に北京で行われる閲兵式にかつて八路軍に参加した日本人兵士が招待されていることについて、建国50周年と60周年の閲兵式に参加したこともある段躍中氏はこう話す。「抗日戦争勝利日の閲兵は歴史を伝え、未来に向かい、中国と世界をつなぎ、平和と発展を伝える式典だ。今は1人1人がメディアになれる時代。海外にいても北京にいても、会場にいてもテレビの前にいても、さまざまな言語と形式で、『歴史を銘記し、平和を守り、ともに努力していこう!』と世界に伝えることができる」。
「北京週報日本語版」2015年9月2日
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