安倍首相は2005年に初めて首相に就任した時から改憲を試み、それを「戦後体制」からの脱却と呼んだ。『朝日新聞』はかつて学者の意見を引用して、「安倍首相の心の中には岸信介が住んでいて、二人は重なり合う歴史観を持ち、明らかに同じ夢を抱いている」と指摘した。2012年末に再任されると、安倍首相がはついに機をとらえ勢いに乗じて改憲を推進するようになった。米国が扇動し、奨励し、ひいては促したことが、安倍首相にとって強い追い風となり、中国の台頭と日本の停滞によって著しく台頭してきた民族主義と戦略面での焦りも、安倍首相に非常に厚い民意基盤と世論環境を与えることとなった。こうして、安倍首相は政権与党である自民党・公明党が衆参両院の過半数を占めるという絶好の機会を利用して、平和憲法というボトムラインに対する空前の挑戦を始めたのである。
2014年、安倍内閣はまず憲法解釈を変更することで集団的自衛権の行使を容認し、戦後数十年にわたって専守防衛に徹し自ら攻撃を発動しないという日本の安保基軸を変更し、自衛隊に防衛と進攻を行う交戦権と処理上の利便性を与え、それによって平和憲法の本質を変えた。今年5月14日、安倍内閣は臨時閣議を召集し、安保関連法案改正に関する『平和安全法制整備法案』、『国際平和支援法案』など11法案を閣議決定した。そのうち『武力攻撃事態法』、『自衛隊法』、『周辺事態法』など10の法律の変更部分は『平和安全法制整備法案』にまとめられ、そのほかに恒久法案『国際平和支援法案』を新たに制定し、自衛隊が国際紛争に巻き込まれた外国の軍隊に対して随時後方支援を行うことを可能にした。
こうした措置により、「周辺」と「有事」という旧安保法の自衛隊活動範囲と条件に対する明確な制限が破られた。道理で日本の世論が「戦争法案」と呼ぶはずである。安倍首相自身も閣議決定後にあれこれと例を挙げて、日本と日本国民の利益が脅威にさらされれば、脅威がどこにあろうとも、日本は安全保障上武力を行使する理由があると説明している。これは自然と、安倍首相の祖父が仕えていた日本皇軍も同じような口実をでっちあげて、中国の東北・華北地域で侵略戦争を発動し、拡大したことを連想させる。さらには、日本が真珠湾を奇襲し、宣戦布告なしに対米戦を開始したのも、こうした理由によるものだった。その歴史は安倍首相の時代に繰り返されるのだろうか?
日本にとって危険なのは、集団的自衛権行使を容認し、攻守の態勢を変更し、新たに自衛隊の職能と性質を定義することだけではなく、自国の命運を米国の戦車にきっちりと括りつけてともに「周辺」を離れ、そして「有事」であるかどうかにもかかわらず頑として本国を出て制限のない海外へと出ていこうとすることだ。以前から、日本は国連平和維持活動にかこつけて米国の対テロ戦争に助力しており、自衛隊はすでに世界各地で活躍し、はるか遠くの「アフリカの角」、アフリカ東部のジブチに基地まで設営している。今、日本は大胆にも何のかかわりもない南中国海紛争に介入し、米国の呼びかけに従って、自衛隊の戦艦と軍用機を派遣して南中国海を巡航し、中国の主権に挑戦しようとしている。
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