背後にある戦略的思考
このことから、改定された開発援助大綱における開発援助を軍事分野に拡大した規定は、まさに国際紛争を助長し、その中から漁夫の利を得るための政策であることが見て取れる。日本が南中国海で中国と領有権を争っている国々に巡視船などの兵器供与を図っていることも、小国や弱国への同情からではなく、日本経済がある程度回復した状況下で、地域情勢の中で、大国としての地位を奪い合い、第2次世界大戦期間中、東南アジア諸国を侵略したことで一時的に支配した南中国海の一部の島嶼・礁を再び支配しようという野望を抱いているからなのである。
現在、日本が南中国海海域の島嶼・礁を支配することは不可能になったが、日本は他国を扇動して南中国海海域で中国に対抗し、南中国海海域の一部の問題に関与し、さらには日本の地域的覇権を確立し、同時に中国包囲戦略を実現することもできる。これは日本政府が南中国海海域の問題と政策に対する介入を放棄したくない重要な理由である。そのうちの政府開発援助政策はまさに日本政府が南中国海の問題に介入する上での有力な手段となっている。
また、日本人質二人が最近「イスラム国」に殺害された。その起因となったのは、安倍首相が中東4カ国訪問中、イスラム国に対処するために中東諸国に2億ドルの資金を提供すると発表したことである。その結果、「イスラム国」が復讐として、日本人人質二人を殺害すると脅迫し、日本政府に対し身代金として2億ドルを支払うよう要求した。二人の日本人人質は殺害されたが、安倍首相の政策はまだ続いている。安倍首相は国会で今後テロ対策特殊部隊を派遣して人質を救出すると述べただけなく、日本国内の関連法律を改正し、このテロ政策を支えていく、とした。
同様に、今回改定された政府開発協力大綱も日本政府の開発援助資金をテロ対策に用いることを明記した。このことから、日本は引き続き政府開発援助資金を活用して中東地域諸国の政府を支援し、イスラム国とその他テロリズム勢力に反対し、打撃を与えていくと推定できる。
2015年版の政府開発援助大綱には、海洋、宇宙空間、サイバー空間、テロ対策、地雷除去、不発弾除去などに対する支援を可能とするなど、より広い軍事的用途が盛り込まれた。その分野はほとんど軍事に関わるもので、しかも政府開発援助をこれらの分野に活用すれば、その援助の度合い、深さ、広さは予測しがたい。そして最終的には、日本政府が完全にやりたい放題になり、その後で体裁のいい解釈をつけるに決まっているのだ。
日本が戦後長い間育んできた「平和国家」としての政策は、このようにして安倍右翼政権によってばらばらにされ、少しずつ有名無実化してきた。これは日本が比較的危険な方向に向かおうとしていることを示唆している。すなわち、その軍事手段の行使、武力行為の選択は日増しに抑制がきかなくなっている。日本は現実的には依然平和主義国家だが、このまま進んでいった場合、その軍事力と武力手段の行使はどこまでが合理的範囲と言えるのか?これは疑念を抱かせられる問題である。
「北京週報日本語版」2015年3月11日
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