安倍晋三氏は首相に返り咲いて以来、歴史問題で何はばかることなく放言し、植民地支配および軍国主義による侵略の罪をしきりに否認している。その誤った歴史観に対しては周辺国が憤りを表明しているだけでなく、国際社会もあまねく問題視している。(文:呂耀東・中国社会科学院日本研究所外交室長、王恵波・中国社会科学院大学院博士課程学生)
日本政府が20日、国会に提出した1993年の河野談話の作成過程に関する検証報告書は「当時、韓国の慰安婦の証言について裏付け調査は行われなかった」とした。これは軍国主義の罪を否認する意味合いが強い。河野談話は1993年に河野洋平官房長官(当時)が発表した談話で、第2次大戦時に政府と日本軍が慰安婦問題に関与し、かつ強制性を帯びていたことを認めたものだ。ニューヨーク・タイムズは23日付社説で、歴史を否認する安倍首相の行為を批判。「安倍首相が検証報告の公表を指示したのは、日本の戦争犯罪の被害者に対して不公正な行為だ。安倍首相が日本と世界に向けて、歴史を否認する者は間違っていることをはっきりと示すべき時だ」と指摘した。
だが、右翼保守政治家の家に生れた安倍氏は祖父である第2次大戦の「A級戦犯」、岸信介の誤った歴史観から深い影響を受けている。安倍氏は著書で、東京裁判の法理上の根拠に疑問を呈し、いわゆる「『A級戦犯』には誤解がある」「戦犯は国内法上犯罪者ではないからだ」との認識を示し、「あの戦争に罪人はいない」と述べた。これは岸信介の「A級戦犯」の罪に対する安倍氏の詭弁が、すでに東京裁判の正義性に対する重大な挑戦、第2次大戦後の国際秩序に対する公然たる挑発にまで発展したことを物語っている。第1次安倍内閣時の2007年3月、安倍氏は「慰安婦の募集に関して、狭義の強制性はなかった」と述べた。現在安倍氏が河野談話作成過程の検証に力を入れているのは、その誤った歴史観および価値判断の具体的表れであり、日本で「歴史修正主義」思潮が氾濫しているゆえの歴史的必然でもあるといえる。
河野談話の継承を決定しておきながら、なぜ安倍氏はこれを検証するのか?韓国紙・中央日報は23日付記事で、今回の検証チームの中心メンバーの1人が安倍氏の「歴史教師」であるため、「検証」の前からすでに結論ありきだったと報じた。日本の歴史学者、秦郁彦氏は河野談話検証に参加した「民間委員」5人の1人だ。彼は慰安婦強制連行を否定する日本の右翼学者の代表で、その著書『慰安婦と戦場の性』は安倍氏ら河野談話否定論者の『救世のバイブル』と呼ばれている。これは自ずと安倍氏らの「歴史教師」となった。安倍政権が秦氏のような慰安婦問題否定論者の学者の河野談話検証委員会入りを強く推し進めたことは、まず結論ありきで検証作業を行った「疑い」があることを意味する。このため、韓国など国際世論は検証委員会自体に問題があると疑問を呈している。