やや老いの目立つ顔には、時おり子供のような笑顔が浮かぶ。松岡環(67)さんは、南京大虐殺の研究で知られる女性学者の一人で、歴史の真相を20数年に渡り追い続けている。
松岡さんは大阪府松原市の小学校教師だった。歴史を専攻していた松岡さんは、1988年に南京市を訪問し、日本軍の第二次世界大戦中の暴行に衝撃を受けた。松岡さんは良心に駆られ真相を追求するため、南京大虐殺の民間調査を開始した。日本で250人以上の元兵士を取材し、自費で80数回も中国を訪れ、300人以上の大虐殺の生存者と面会した。松岡さんの努力により、南京大虐殺の真相が、よりはっきりと日本の一般人の前に示されようとしている。
松岡さんは、自ら監督したドキュメンタリー映画「南京 引き裂かれた記憶」を携え、2014年4月5日に再び南京市を訪れた。抗日戦争中の南京会戦、その後起きた大虐殺の惨劇を記録した同作品の中国初となる上映会が、松岡さんの計画に基づき、この記憶が残る都市で開かれた。
◆沈黙の中、真相を求める
同作品は日本の7人の元兵士、中国人の6人の生存者による真実の物語を主線とし、中日双方のアングルからあの恐るべき惨劇を再現した。同作品は歴史の事実により、南京大虐殺の恐ろしさ、後世への教訓を示した。同作品の序言に、松岡さんは次のような注釈をつけた。「この事件の証拠は国際裁判所に採用されており、中国ばかりではなく世界の歴史にも記録されているが、日本史には存在しない。実におかしなことだ」同作品の登場人物は皆、松岡さんに取材を受けたことがある。日本国内での取材は想像以上の難しさだった。これは「南京大虐殺は存在しなかった」という声が存在し続けており、自らこれに加わったと認める人がいないからだ。敗戦時に情報がすべて焼却処分されたのと同じく、南京でやったことを口にしてはいけないという口封じが今も力を発揮し続けており、自ら証言しようとする人はいない。
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