5日、日本人作家の渡辺淳一氏が病気で逝去したというニュースが伝わった。30数年前の改革開放後、中国の民衆が最初に日本現代文学に接したのは、おそらく渡辺氏の作品を通してであった。「失楽園」「男というもの」など氏の代表作は、中国人読者の記憶の底に深く刻まれている。数万人のネットユーザーが、微博(ウェイボー)やインスタントメッセンジャーアプリ「微信(Wechat)」を通じ、氏独特の文体を懐かしんだ。新華網が伝えた。
○「生活者であると同時に文学者」
改革開放初期という時代背景もあり、氏の作品に登場する大胆な「性描写」は、大きな物議をかもした。だがそれも、氏が中国で最も人気が高い日本人作家の一人となるのを阻むことはなかった。
氏の晩年作の著作権関係業務に携わっていた上海人民出版社ベテラン編集者の曹楊氏は、「中国人読者に最も歓迎され、愛された日本人作家と言えば、私の印象では、まず渡辺淳一氏、次に村上春樹氏だ」と話した。
大まかな統計によると、渡辺氏は晩年の10年間に、新作出版記念式、上海書展(上海ブックフェア)、上海万博のフォーラムなどへの出席のため、少なくとも4回は上海を訪れている。2004年に「夫というもの」、2007年には「鈍感力」が、上海で発行された(いずれも中国語版)。曹楊氏は、中国側編集者として氏の訪中に随行した。
1960年代生まれの編集者である曹楊氏は、氏の作風について、「生活者であると同時に文学者」と形容する。
曹楊氏は若い頃、「失楽園」の愛読者のひとりだった。その後、「鈍感力」の中国語版出版に携わった時に、「人生経験を重ねた人間特有の観察力、特に人間の細かい動作や心理的描写の素晴らしさ」に深い感慨を覚えたという。「例えば、氏がだんだんと本音を出し合い、衝突する夫婦を描写する時、最後にクライマックスが来る場合であれ、ストーリーの中ごろから激しくなる場合であれ、絶妙なタッチで描かれた生活の細部に、読者の心は大きく揺すぶられる」。
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