■全国津々浦々にまで行き渡っている新聞の販売ネットワーク
明治大学の情報マーケティング学部の非常勤講師は、日本の新聞の出版方式は非常に特殊であるという見方を示しており、これが日本の新聞の発行部数が時流と逆行している大きな要因であると語る。「日本の新聞は非常に強大な販売ネットワークに依存している。短い時間内で新聞を購読者の手元に届けるというこの販売システムはスタンドで新聞を販売する他国のシステムとは大きく異なっている」と指摘する。朝日新聞社の秋山耿太郎会長は2009年に中国の経済紙「金融時報」のインタビューに応えて、「日本の北海道の最北の稚内から九州の離島に至るまで、我々は販売店2600カ所と販売員7万人を擁している。このような大規模な販売ネットワークを備えているので、新聞の発行部数はそこまで簡単に減少しないと考えている」と語っている。
大部分の販売店は専用の新聞と単独契約を結んでおり、新聞社の販売部と協力をして、出来る限り迅速に新聞を各家庭に送り届ける。販売員は新聞を配達する前に、新聞の中に広告を折り込むことで、収入を増やしている。「読売新聞」は独自のプロ野球チームを持ち、販売員はプロ野球の試合の無料チケットを購読者にプレゼントすることもある。
■地域社会が新聞を読む習慣を形成する
林香里教授は、日本では個人と地域社会の密接な関係性も購読者が新聞購読を止めない重要な要素の一つとなっているという見方を示す。多くの日本人がある新聞に対して忠実な購読者であり続けるのは、ごく単純に購読者の家族がずっとその新聞を購読しているからという理由やたまたま居住地域の販売員を知っているという理由にほかならない。
明治大学の情報コミュニケーション学部の非常勤講師は、「日本の新聞が今尚膨大な発行部数を誇っているのは、販売システムのほかにも、日本の新聞が読者からの深い信頼を得ていることや一部地方紙がその土地の地域社会との関わり方を極めて重視していることなども関係している」という見方を示している。2011年3月11日の東日本大震災が起きた後、宮城県の地元紙、石巻日日新聞社は津波による被害を受けたたため、電気が絶たれて新聞を発行することができなくなった。そこで新聞社の記者たちは、購読者を失わないようにするため、手書きの新聞を発行し、自ら避難所を駆け回り、手書きの新聞を購読者の手元に届けた。
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