受賞逃す原因は「大衆的」?
最近、「人気作家は往々にして受賞を逃す。それは、審査委員会が、この作家は既に多くの人に注目されているのだから、文学賞まであげる必要はないと感じるからだろう」との指摘もあった。
また、中国のネット上では、「昨年も村上氏に対する期待は高かったが、結局莫言氏が受賞した。もし、今年も東アジアの作家が受賞したら、ノーベル賞の一貫したやり方にそぐわないため、村上氏の受賞の確率は低い」という声も出ていた。
村上氏の作品を好まない人の主な理由は、作品が大衆的という点だ。しかし、村上氏の作品の中国語簡体字版翻訳者である林少華氏は、「村上氏の作品は、一般的な意義での『大衆的』ではなく、知恵と美の追求を兼ね備えた厳粛な文学、もしくは『純文学』だ。村上氏の文学は表面的には大衆的に見える部分があるが、その含まれる内容は決して大衆的でなく、低俗でも世俗的でもない」と評価している。
また、村上氏の作品の中国語繁体字版翻訳者である頼明珠氏も、「村上氏のおかげで再び文学の分野に戻って来た人も少なくない。村上氏が受賞すれば、多くの人が間接的に精神的励みを受けるだろう。これは、ノーベル賞の意義の1つ」とし、「村上氏は受賞すべき」との見方を示す。
村上氏の受賞は時間の問題?
村上氏本人はというと、ノーベル文学賞にそれほどの興味を示さない。村上氏は、本を書くことは好きだが、多くの人が集まるセレモニーやイベントなどは好まず、「考えただけでもストレス」とそのような場をずっと避けている。一人で活動しているほうが楽しいのだ。
林氏は以前に、「村上氏は遅かれ早かれノーベル文学賞を受賞するだろうが、今年受賞する確率は低い」と述べたことがある。また、白氏も「村上氏は中国でも大きな影響力を誇り、純文学作品もあれば、大衆向きの作品もあり、人気作もたくさんある。ただ、ハイレベルの作家にとってこれは決していい事ではない。そのため、ノーベル文学賞の受賞は多分ないだろう」との考えを示している。
さらに、白氏は「ノーベル文学賞を受賞した作家は厳粛な文学の中でも、抜きんでている作家ばかり。村上氏には大衆的で、流行的な一面が多く、販売数は多いが、文学の純度という要求からすると、弱点があると言わざるをえない」と指摘している。
評論家の葉匡政氏も「村上氏の小説には大衆的な小説の特徴が見られるため、ノーベル文学賞の審査員の好みには合わないかもしれない。審査員は高齢で、文学に対しては保守的だから」としている。
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