米紙ワシントン・ポストのウェブサイトは現地時間21日、日本の安倍晋三首相へのインタビュー記事を掲載した。「日本の安倍晋三首相:中国の衝突へのニーズは『根深い』」との見出しだ。中国メディアが記事の内容を重訳すると、中国内外で大騒ぎとなった。日本外務省は「ワシントン・ポストの記事は正確でなく、誤解を引き起した」と表明した。するとワシントン・ポストは「記事は安倍氏の発言を正確に引用し、解釈している」と直ちに応じた。だが日本にいる中国メディアの記者の中には、安倍氏の発言の日本語原文を入手し、中国版ツイッター「微博(ミニブログ)」で「安倍氏は原文では『衝突』や『中国は対立または衝突を望んでいる』とは言っておらず、事実と異なる報道の被害者らしい」と指 摘した者もいる。(文:何輝・中国伝媒大学世情研究所副所長。環球時報掲載)
このドラマチックな出来事の中で、現在メディアの関心はどれも安倍氏に振り回されており、安倍氏がインタビューを受けた際の日本語原文および訳文、ワシントン・ポストの英語原文と中国メディアによるその重訳の研究ばかりに注目しており、安倍氏のロジックのわなを踏み込んで暴くことをおろそかにしていると言わざるを得ない。
外交において人々は常に言語文化や表現習慣の違いからくる誤解の回避に努めているが、こうしたことが起きるのは珍しくない。中米間では、誤訳が互いの戦略の読み取りに影響を与えたことがある。例えば中国が長年遂行してきた外交方針「韜光養晦」は、米国防総省の翻訳で大きく歪曲されたために、米国が中国の国防発展戦略に長年疑念を抱き続ける結果となった。
だが安倍氏の発言が大騒ぎを引き起したのは、決して翻訳や重訳の問題によるものではなく、その見解自体が間違っているからだ。安倍氏はインタビューで、中国の愛国主義教育を反日教育と同じものとみなし、中日関係にとって愛国主義教育が根深い妨げとなっていると指摘した。中国には確かに愛国主義教育があり、日本帝国主義、日本軍国主義に反対する内容がある。だが平和を愛する日本国民に反対したことはない。安倍氏のロジックのわなには、間違いがもう1つある。つまり中国共産党は政権を維持するためには急速な経済成長を必要とし、それには資源を獲得する必要があり、それには領海と領土を奪う必要があり(釣魚島<日本名・尖閣諸島>などを指す。これは当然衝突を引き起す 可能性がある)、それには反日教育による支えを必要としているというものだ。中国は急速な経済成長のために釣魚島を奪い取る必要があり、そのためには根深い反日教育による支えを必要としている、というのが言外の意味らしい。
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