「中国人画家の描いた水墨画を見て日本人男性が涙を流すなんて思わなかった」-----。日本在住24年になる北京出身の女流中国水墨画家、里燕さん(59)は13日、遼寧省瀋陽市で開催中の個展の合間に取材に応じ、2002年に日本で開いた個展を振り返ってこう語った。中国国営の通信社「中国新聞社」が伝えた。
「その絵に描かれていたのは、日本で有名な剣岳山だった。この男性は『毎日この絵を見るたびに、いつも新たな感覚が沸き上がってくる』と語った」。当時48歳のこの水墨画愛好家はぜひ水墨画を教えてほしいと里さんに頼み込んだという。
里さんは現在、日本華僑華人文学芸術家連盟の理事と横浜フェリス女子学院の水墨画講師を務める。「1980年代に日本に来たばかりのころは、生活や仕事面でいろいろ苦労するだろうと覚悟していたが、実際そんなことは全くなかった」と里さん。「日本では、普通に絵が好きな一般市民だろうと、プロの画家だろうと、中国画、特に水墨画に対して並々ならぬ興味を持っている。日本に着いたばかりにもかかわらず、多くの人が水墨画を習いたいと集まってきた」
里さんは日本に住み始めてから、夫と一緒に中国画教室を開いた。今までに20代の青年から80代のおばあさんに至るまで、約500人の生徒に水墨画教えてきた。かつての生徒の中には、今では先生として中国画を教えている人もいるという。
中国水墨画を教える以外に、中国人画家たちの日本での個展開催を中国の文化機構と共にボランティアとして後押ししてきた。画廊・美術館との連絡や絵の選定、作品展示、現地のメディア取材の手配などを引き受け、中国の「三百家画廊展」を含む10以上の展覧会をすでに手がけた。
今年の冬、里さんは約50点の水墨画を携え、瀋陽市の遼寧美術館で個展「意識…無意識 里燕絵画展」を開催した。これは中国における3度目の個展となる。
蓮の花、雪の草原、山中に立ち込める靄、流れる雲-----。里燕氏の絵には独特の趣がある。中国美術館(北京)の範迪安・館長は里さんの作品について、「抽象的なスタイルを用いながら、具体的な自然景観を取り込む構成で、色と墨が溶け合う画面には、東方ならではの美的感覚によるイメージと画風が形成されている」と評価する。
「日本に長く住んでいるため、自分が描く水墨画にも日本の『大和絵』の特徴がにじむようになった。色彩の変化により、中国水墨画がいっそう活力を増した」と話す里さん。今回、中国で個展を開催したのは、中国の画壇や同業者たちと討論や交流を行いたかったからという。「異なる地域の文化は、つねに理解から注目、注目から好きという感情に発展させていく必要がある。水墨画を使って中国文化を伝承し、中日の文化交流のためにささやかな貢献をしたい」。こう語る里さんの目には涙が輝いていた。(編集MZ)
「人民網日本語版」2012年12月17日 |