薛偉委員 まさに葉委員が話されましたように、中日両国の文化交流は特に重要です。文化は人間性を明らかにするものであり、人と人の間の共通点を明らかにするものだからです。これを切り口とすることで、人と人の間のコミュニケーションとお互いの親近感を容易に強めるからです。
一九七〇年代末、有名な指揮者の小澤征爾氏は中国で公演しました。当時私はまだ小学生で、大人たちと白黒テレビの前に集まって彼が中国のオーケストラを指揮するのを見ました。小澤氏の公演は全中国にセンセーションを巻き起こしました。それは、当時十二歳の子どもだった私に強烈な印象を与え、日本を知りたいという好奇心を芽生えさせたのです。
一九八三年、私は日本の国際バイオリンコンクールで賞を獲得して、数多くの日本の芸術家や人々からのお祝いの言葉をいただきました。彼らの情熱や友好、それにクラシック音楽に対する高い鑑賞レベルなどは、私に強い印象を残しました。それによって、日本の国と民衆に対する親近感が生まれました。
魏 中日文化は同根同源で、中国の多くの優れた伝統が日本にしっかり根を下ろしています。「温、良、恭、倹、譲」という美徳もわれわれの共通の宝物です。
周 唐首席委員にお聞きします。現在、どのような内容、形式で中日文化交流に新たな原動力を提供し、また国民感情改善のためにどのような新たな役割を果たすべきでしょうか。
唐 中国と日本は一衣帯水であり、二千年の長きにわたる友好往来の歴史の中で、文化の交流がずっと貫かれ、中断されたことはなく、その淵源は深く、厚いと言えます。秦、漢の時代から始まって、漢字、仏教、法令や制度、書画、詩歌が日本に伝わり、日本文化の重要な構成部分になりました。中国の儒家思想が日本で豊かに発展し、「和諧共生」(和らぎ調和してともに生きる)、「以和為貴」(和をもって貴しとなす)という理念も中日両国の共通の特徴です。両国は互いに近くて通じ合う東洋文化の価値理念を持ち、これが中日関係を他の国々との関係と区別する際立った特徴であり、また中日関係の独特の優位性でもあるのです。
この面で、最近、一つのよい例があります。先ごろ、「中日国民交流友好年」の幕明けの行事として、特別展「北京故宮博物院200選」が東京で成功裏に挙行されました。展覧会は空前の盛況で、日本のメディアがこれを広く報道し、社会の反響も非常に大きかったのです。天皇皇后両陛下、皇太子殿下も参観され、日本の民衆は毎日、長い行列を作って入場を待ち、最も長い待ち時間は五時間にも達したそうです。参観者の総数は二十五万人を超えました。われわれは国交正常化四十周年というこの好機を利用して、こうした活動をもっと多く行わなければなりません。
これはわれわれに、こうしたことを思い起こさせてくれます。すなわち、両国共通の文化的価値観や理念から着手し、本当に人の心を打ち、共鳴を引き起こす文化交流活動をより多く展開してこそ、はじめて多くの普通の民衆の関心を呼び、中日関係の支柱となるようにすることができ、また、真に彼我の感情の距離を近づけることができるということです。
薛 私はまだよく覚えていますが、一九八〇年代初めごろ、日本の映画やテレビドラマが中国大陸に上陸してきました。『追捕』(日本語題『君よ憤怒の河を渉れ』)、『おしん』などの作品と高倉健、山口百恵、栗原小巻、中野良子などのスターです。彼らの中国での知名度は本国の日本を上回っていると言われるほどで、津々浦々に知れわたっていると言えますが、彼らは中国に日本文化の風を起こしたのです。これらの映画、テレビドラマは、中国人が持っていた日本人に対する軍国主義一辺倒のイメージを根本から変えました。また中国の観衆に対して、日本社会を感覚的に認識させ、日本が廃墟の中から立ち上がり、現代化に向かって進んだ過程を見せるものとなりました。
日本と中国は、文化的側面の交流において、互いの距離が近いというメリットがあります。当時、中国の門戸は開かれたばかりでしたし、加えて数十年にわたって文化的に外界と隔絶されていたため、中国人は西洋文化の受け入れにはまだ一種のプロセスを必要としていました。しかし、日本文化と中国文化は共通の根を持つため、中国人にとって大きな親和力がありました。もし両国が文化交流の強化を堅持していければ、両国人民の気持ちの上に、双方が「ともに利益を得、ともに生存する」ために有益な土壌を育むことができるのです。
唐 確かに、テレビ・映画の作品が中日関係に及ぼす影響と役割は無視することはできません。一九八〇年代、両国の国民感情は空前の良好な水準に達しましたが、映画作品の功績は非常に大きいと言えます。今後、中日両国は、相手国の優秀なテレビ・映画の作品を多く導入しなければなりません。また相手国の市場に自国のテレビ・映画作品をプロモーションするよう力を入れ、双方が協力して中日人民の代々にわたる友好を盛り上げる作品を多く撮影すべきです。成功した先例がありますから。
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