今回の自転車盗難事件は一件落着した。河原さんは中国でVIP待遇を受け、ネットユーザーや警察の人情を感じることができた。しかしすべての一般市民や観光客が、このような待遇を受けられるわけではない。武漢に限らず、中国各地で自転車盗難事件が頻発している。それだけで都市の道徳が廃れており、治安が悪いとは言い切れないが、これは少なくとも、都市の治安管理の不備を反映している。一部の行政権力が一般人の権益を重視していないことが、自転車盗難が解消に至らない根本的な原因である。
中国の都市で自転車に乗るのは誰か。自転車を移動手段とするのは、都市で最もありふれた低所得の労働者であり、発言権がなく権利を守る力がない。これは窃盗犯にとって、容易に手が出せる低リスクの対象であり、仮に窃盗に失敗したところで、軽い処分が下されるだけだ。ゆえに警察のみならず、自転車企業や交通管理部門も、自転車の防犯装置と防犯措置、また外出に便利な設備に対して、行き届いた設計を加えようとはしない。自転車の持ち主でさえ、窃盗にあうことに慣れてしまっている。誰もが警察による迅速な事件解決を期待できるわけではないのだ。
都市や国家の体裁とは、高層ビルの数、高度経済発展の程度、上流階級の生活の豊かさとは関係なく、弱者の立場に置かれている一般労働者といかに向き合うかにかかっている。中央政府の指導者は国民に対して、「体裁の良い労働の実現」と、「尊厳ある生き方」を呼びかけている。たった一台の自転車が、労働者が体裁のある安全な生活を送っているかを反映する鏡となる。一般的な中国人が、河原さんと同じような待遇を受けられるようになれば、中国とその都市に本当の体裁が備わることになるのだ。
中国人一人ひとりの自転車に関する出来事が、社会の文明水準を測る尺度となる。(編集YF)
「人民網日本語版」2012年2月22日 |