中国の第12次五カ年計画(2011~2015年)概論において、サービス業全体の発展を促す重要な一環として旅行産業の発展に積極的に取り組んでいくことが謳われている。旅行産業は中国の地方政府の戦略推進計画の中にも組み込まれ、現時点で、30省(市・区)が重要な位置に据えている。うち27省(市・区)が旅行産業を支柱となる産業として位置づけている。これは旅行産業の支柱的な位置づけが中央政府から地方政府に至るまで一貫していることを示している。
だがそのように認識するだけでは意味をなさない。支柱産業と位置づけられた旅行産業だが、その作用を発揮させるにはどうしたらよいのか?中国の旅行産業に足りないものは何か?製造拠点のほとんどを海外に移転させ、観光立国として成り立つ日本を見てみよう。中国旅行産業の課題が見えてくるはずである。
まずは管理体制を見てみよう。日本の旅行産業の成長を保証しているのはその合理的な管理体制だ。政府‐協会‐民間団体の「三位一体」による管理体制により、日本の旅行産業の成長が後押しされている。中国にも旅行業界の協会があるが、日本のそれと比べると管理範囲が狭く、政府との関係も曖昧な上、経費の不足、効果がおよぶ範囲が狭い、などの欠点が浮き彫りになっている。
次に管理能力である。日本の国内旅行市場の成熟度は非常に高く、その業務サービスに対する要求も非常に高い。観光バスの衛生基準、乗務員の安全への取り組みや接客態度、宿泊施設のフロント・部屋・レストランにおける標準化された、顧客視点での接客サービスを見れば、日本旅行業界におけるサービスの高品質性を感じずにはいられない。この面において中国と日本の差はまだまだ大きい。中国の旅行業のサービスの品質の問題について、中国旅行に来た観光客から多くの意見が挙げられている。こうしたことは、中国が業界の管理能力を強め、方向性のある戦略を策定し、職種に対するプロ意識や必要な資質をつけさせる必要があることを示している。清潔、快適、安全、安心な旅行を提供し、観光客に満足してもらうために、景勝地のトイレやゴミ処理、排水処理などに対する検査も強化していかなければならない。
最後に、業界と地域の提携である。日本の観光地では、交通・宿泊などの観光事業者が業務提携している場合が多い。ほとんどがその地方自治体の取り組みによるものである。レストラン、宿泊施設、交通、観光名所、レジャー施設、ショップなどのサービス業・小売業同士が提携を結び、各種割引サービスを旅行者に提供することで、提携双方の成長を促そうというものである。また、そうした提携関係が異なる地域間で行なわれることもある。それぞれの観光資源を提携・利用し合えば安価な旅行代金を提供することができる。そうすれば海外から旅行者を誘致することができるといった仕組みだ。こうした手段が、観光収入の増加、提携双方の成長につながることは実証済みである。中国の旅行会社には業務提携への意識の高まりは見られず、未だに縄張り意識が強く、閉鎖的だ。中国の旅行社は、規模の小ささ、まとまりのなさ、管理の悪さ、品質の悪さが特に際立っているが、今のところ明瞭な改善は見られていない。地域をまたぐ業務提携を行なうには問題が山積みしており、その実現には困難がつきまとう。このため業務提携への道は、中国の旅行産業が今後成長していく中で大きな課題として立ちはだかるだろう(王鵬)。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年11月29日 |