■対原潜作戦が演習の重点
海上自衛隊は東アジア各国海軍の中でイージス艦を最多保有し、水上艦の防空・ミサイル防衛能力も最強だ。だがそれよりも注意が必要なのが対潜戦闘能力だ。冷戦時代に一貫してソ連の原潜に的を絞り艦隊を構築していたこと、そして近年の「中国潜水艦の脅威」への過度の憂慮から、海上自衛隊はヘリコプター搭載駆逐艦、ジェット哨戒機など対潜専用兵器を相次ぎ開発してきた。米国を始めとする他国との合同軍事演習でも、海上自衛隊は対潜作戦を特に重視している。
「Koa Kai」演習では対潜演習も行われた。「くらま」が遠路参加したのもこのためだ。「くらま」は排水量5200トンで、主砲2門、「アスロック」対潜ミサイル、「シースパロー」艦対空ミサイルを搭載し、SH-60J哨戒ヘリコプター3機を艦載。高く大きな格納庫と広く大きな後部甲板は、同艦が「対潜水艦専門」であることをはっきりと示している。演習で「くらま」は米加両海軍の対潜哨戒機や水上艦と合同演習を行い、海空合同対潜作戦のノウハウを蓄積した。さらに注意を要するのは、以前の「Koa Kai」演習で米原潜が仮想敵の役割を務めていることだ。日本が現在原潜を保有しないことと考え合わせると、「くらま」は対原潜戦術の研究のために参加した可能性が高い。
海上自衛隊は最近、中国海軍の動きへの注視を強め、さらには列島を越えて太平洋へ向かう中国海軍の艦艇や潜水艦に近距離で嫌がらせを繰り返してすらいる。日本メディアが中国原潜の戦闘能力をしばしば誇張していることと考え合わせれば、合同演習による対潜戦闘能力の強化という海上自衛隊の動きに、中国が警戒を保つのは当然だ。日本テレビは、今回の日米合同演習は中国が主要仮想敵国であり、「今後も同様の合同訓練が積極的に進められる」との見方を示した。NHKテレビも同じスタンスで、南西諸島の防衛態勢の強化が演習の目的と報じた。
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