■実戦的意義より象徴的意義が大きい
今回の演習について、中国の軍事専門家は次のように指摘する。
軍事用車両1500台の参加は規模的には数個機甲師団に相当し、南西地区でこれほど大規模な演習を行うのは異例だ。だが「抗中」のラベルを冠してはいるが、実際の意義は限定的だ。第1に、兵力構成(軍事用車両1500台と航空機30機)から見ると、依然として地上戦、さらには戦車戦が中心の演習だ。だが中日は陸上国境を接しておらず、中国が日本に上陸作戦を行い、大規模な機甲侵入を行う可能性はほぼゼロだ。今回の演習で得られるノウハウは、いずれも実戦では応用しがたい。中国に対する日本の思考が、ソ連からの大規模機甲侵入に備えていた時代にいまだとどまっていることは明らかだ。第2に、第7機甲師団が応援に駆けつける意義も限定的だ。軍事用車両1500台が参加する作戦において、わずか10数台の戦車と装甲車がどんな役割を発揮できるのか疑問だ。
第7師団の参加は実際の応援部隊としてというよりも、演習への注目を高めるためのものと言った方がいいだろう。第7師団は陸上自衛隊において代替不能な地位にある。第7師団は1962年に発足した日本唯一の機甲師団で、3個戦車連隊、1個機械化歩兵連隊、1個砲兵連隊、1個高射砲連隊、1個飛行連隊からなり、90式戦車170両を含む戦車約300両が配備されている。90式戦車は世界で最も高価な戦車で、世界最先端だったこともある。自衛隊の90式戦車の半数以上が同師団に配備されている。
第7師団には日本最先端の89式歩兵戦闘車を含むキャタピラ式軍用車両600台以上が配備され、自衛隊トップレベルの装備を誇る。旧ソ連に備えていたこのような精鋭部隊を「南西の戦局」の応援に派遣するとは、中国を敵にするとの明白なシグナルを外部に発するものと見て間違いない。また演習全体も、昨年の防衛大綱改定を受けて防衛の重心をロシアから中国へのシフトする現実的な一歩を意味しているようだ。
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