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日本の中国投資の歴史をたどれば、「軽から重」へ、最も早く進出したのは衣料や靴・帽子などの軽工業、後に家電や電子、自動車工場といった重工業が続いた。現在、高級プティックを除き、欧米や日本ではすでに自国で生産した衣料はほぼ見られず、いずれも中国で生産したものだ。もちろん、この「生産」は「縫製」にすぎないが、すくなくともシャツ縫製の労働者に就業の機会を提供してきた。
だが今、この就業の機会に問題が出てきた。最も早く中国に進出した日本のアパレル企業は撤退する意向を示している。日本最大の紳士既製服販チェーンの青山商事と無印良品で有名な無印計画は先ごろ、中国での生産規模を大幅に削減する計画を発表した。
青山商事が中国で生産する製品のシェアは75%、良品計画は60%を占めるが、両社とも3年後にこのシェアを50%以下まで引き下げる計画。いずれも縫製工程の拠点を東南アジア諸国にシフトする。メイド・イン・チャイナブランドで起業し、低価格ブランド代表格のユニクロを運営するファースト・リテイリングも中国以外で生産規模を拡大する。
中国から撤退する原因は、人件費増と人民元高によるコスト上昇。もともとこれらの企業が中国に進出したのは、90年代に円が急激に上昇した後、中国の廉価な労働者に目をつけたからだ。
中国の人件費上昇はまったく理にかなったものだが、問題はこれらの外資系企業が人件費を理由に離れた後、外資に雇用されていた中国人労働者に誰が就業の機会を提供するかだ。就業に影響が生じた場合、当初の人件費上昇は意義を失うのではないか。
もともと縫製のような一般産業は絶えずシフトを繰り返してきた。人件費の高いところから低いところへとシフトし、その後に産業チェーンの中でさらに上流に位置する業種で空白を埋める。これは産業のグレードアップと呼ばれる。表面的に見れば、生地の生産はやはり中国で行い、産業がグレードアップしているようでも、問題は縫製にしろ、生地にしろ、販売はいずれも外資が行っているということだ。中国側から言えば、産業のグレードアップといった問題などは存在せず、しかも生地の生産はシフトするのかどうか、いつシフトするのかも中国側が決めることではない。
改革開放が始まったばかりの時代、人のために代わりの労働者になることは仕方なかったからだが、人のために一世代、それも30年となれば、進歩を考えないのは問題だ。現在のような世界経済が収縮している時代、代行労働者の収入は下がり続け、その機会すら減り続けている。一方、輸出収入の減少が土木・建築や不動産に影響を及ぼすは必至だ。米国債の格下げで世界経済は新たな低迷状態に入った、というのは争えない事実のようであり、この事実が中国経済にもたらす影響が次第に表れてきている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年8月25日 |