資料写真:村上春樹
効率への批判は、これまでずっと村上小説の重要な題材となっている。『ダンス・ダンス・ダンス』(1988年)に登場する五反田は、かっこよく、女性に大人気のスター俳優であり、東京市中心部の高級マンションに住み、最高級の外車を乗り回し、毎日高級コールガールがやってくる。外車のガソリン代から高級コールガールの費用まで、全て会社が出してくれるが、一方で五反田を下品なAVに出演させていた。「俳優である限り、求められる人物を演じていくだけだ。」彼は小説の中でそう繰り返している。こういう生活態度だったからこそ、五反田は人生への嘆きから殺人を犯し、ついには人生を破壊させた。
授賞式で村上氏はこう続けた。「損なわれた倫理や規範の再生を試みるとき、それは私たち全員の仕事になります。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならないのです。」
震災後、特に福島原発事故発生後、このように反原発を叫んだ作家は、村上氏が初めてだろう。特に、日本のほぼ全ての原子力発電の専門家が原子力発電支持の姿勢を崩さず、日本政府の原発政策が方向性を見失う中、村上氏の影響力をもって国際舞台でこのように発言できることは、得がたいことである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年8月19日 |