しかし、このような説を主張する人々は、国や地域の盛衰における最大の変数が人口であることを忘れている。先の見えない恐怖を前にした人々にとって、最も安全で、自分や家族、子孫のために最も責任ある選択とは「三十六計逃げるに如かず」だ。理想主義や愛国主義の精神は何の役にも立たない。日本人の海外における資産は2兆ドルに達する。もし放射性物質の漏えいが今後拡散すれば、海外から帰国して「国を救う」日本人よりも、海外に引っ越す人や産業のほうが多くなるのではないか。
地震、津波、大火事、戦争、伝染病は急性疾患のようなものであり、突如として発生するが、収束も早い。十分な意思と財力さえあれば復興は実現できる。しかし、放射性物質の漏えいは慢性疾患のようなもので、その影響は数千年にわたって続く可能性もある。
日本は高齢化が進んだ国であり、日本の経済発展を維持・促進していくために海外から人口を受け入れることで各界の意見は一致している。しかし、放射性物質漏えいと核の恐怖により、この夢すらも断たれる可能性がある。このことは、日本が将来直面する最大の災難となるだろう。
この文章を書くにあたり、北京大学社会学系の李建新教授が書いた「人口の規律と大国の盛衰」を読んだ。その中で、日本について書かれている場所を引用させていただく。
「1980年代、日本経済は輝かしい成功を収め、一度は米国に挑戦を挑んだこともあった。しかしまもなく、日本は米国に『ノー』と言うだけの気力を失ってしまった。その原因の一つは、その後のわずか20年間で、日本の人口が急速な高齢化期に突入したことだ。65歳以上の人口が占める割合は、1980年には9.0%だったが2000年には17.2%に激増した。一方、同時期の米国の老年人口の割合は11.2%から12.3%に微増しただけだった。日本は人口がこれほど急速に高齢化したことで、発展に向けた動力を失ったのだ」。
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