仕事への影響はしばらくすれば落ち着くだろうが、心が受けた衝撃は長く残るかもしれない。
「僕は中国で働いて暮らしているし、妻と娘も中国人。今回、日中間に問題が起こり、とてもつらい」と矢野さん。「以前は日中友好のような大層なことは考えなかったが、結婚して子どもができて心境が変化した。日中ハーフの子どもを持つようになり、仕事だけでなく、子どもの将来のためにも、日中は友好関係にあるべきと考えるようになった」。
矢野さんは次のように語った。「日本もそうだし、中国もそうだと思うが、現在、そのネガティブな報道が全面的に出ていたという部分がある。もちろん日中問題があるが、民間にポジティブな側面がたくさんある。誤解を取り除くために、日中の民間交流をさらに進めなければならない。役者として、今自分ができることは、中国では日本人、日本に発信し、また日本では中国、中国人に発信し、民間交流の重要性をアピールすることだ」。
どのように民間交流を増進するのか。矢野さんは、「13億人いる中国人と1億人以上いる日本人。それぞれが違う人間であり、国籍で分けて考えず、それぞれ具体的な個人に注目をするべきだ」と、「個人に注目する」考え方を指摘した。「映画やテレビ番組を撮影するとき、周囲で働いている人や観衆はすべて中国人で、日本人は自分1人だけ。しかし今まで一度も自分は日本人で周りは中国人だなんて分けて考えたことはない。すべてを国籍というファクターで色分けしたくないし、そこにいる人は皆いい映画を撮るという1つの目的のために存在しているだけだ」と自らの経験を語った。
「旅行も有効な方法だ」と矢野さんは言う。「今年8月、ちょっと日本に戻って、東京に一週間滞在したが、日本にかなり多くの中国人の観光客がいた。これから、さらに多くの中国人が日本に行けば、日本がどういう国が理解できるし、日本の人たちも中国に来てもらえば、今の中国を知ることができる」。
中日関係の未来について、矢野さんは楽観的な見方を示している。「日中両国は共に相手国で暮らす人がたくさんいる。皆それぞれが1本の『パイプ』となって、両国の民間で情報を伝え合えば、誤解を取り除くことができる。日中のすばらしい未来のために、僕はこれからも努力し、ポジティブなエネルギーを伝えていく」。