電話で、その母親は悲しげに、「今自分はガンを患っているが、年金は毎月2000元程度しかない。政府にもう少し補助金を出すよう提案してもらえませんか」と頼んだという。「今、国が失独家庭に出している補助金基準は1人1月当たり150元だ。これでは焼け石に水だ」と黄氏は言う。
その妻はさらに、「今私たちは互いに世話をすることができるけれど、万一片方が先に死んでしまったら、もう1人が入院して手術をしたり、養老施設に入りたくなった場合に、保証人のサインをしてくれる人がいません。居民委員会か街道弁事所でも保証人のサインができるようにしてほしい」と言った。電話が切れてしばらくして、今度は夫のほうが電話をかけてきた。夫は電話で声を上げて泣き、「どうしたらいいですか?どうしたらいいんですか?」と聞き続けた。
この夫婦はすでに年を取っており、養子を取って育てることはもうできない。「彼らにもっと関心を寄せるべきだ。今、こうした人々はますます多くなってきている」と黄氏は言う。
『新京報』の報道によると、2012年、中国には少なくとも100万の失独家庭があり、しかも毎年7万6000世帯のスピードで増えている。人口学専門家で『大国空巣』の作者である易富賢氏は、国勢調査のデータから次のように推断している。「中国には今2億1800万の一人っ子がいるが、そのうち1009万人が25歳前に亡くなっている。これは、そのうち中国に少なくとも1009万世帯の失独家庭が生まれることを意味している」。
「失独老人」の健康状態はほとんどの場合芳しくない。子供を失った悲しみ、絶望、慙愧ややましさなどマイナスの感情が、健康だった彼らの身体を木を食う虫のようにむしばんでいく。その先にあるのはガン、心臓病・脳血管疾患、うつ病といった重病だ。「程度は異なるが、こうした人たちは100%心と身体の病気を抱えている」と黄氏は言う。
精神面でも、こうした人々は一家団らんを楽しむことができない。特に自分と同じような年の人が子供や孫を連れているのを見ると、どうしてもつらい気持ちになってしまう。黄氏は、「こうした人々は比較的心を閉ざしており、社会との交流もかなり減ってしまっている。年越しの時にも親戚回りをしたがらない。1つには自分の子供を連想したくないから。そして同時に、自分が楽しく過ごせないことで周りの雰囲気を壊すのを心配しているからだ」と言う。
「失独家庭の養老は政府が受け持つべきだ。我が国の『計画出産法』と各養老保障でも『失独老人』に言及している」。全人代代表で国家人口計画出産委員会科学技術研究所所長の馬旭氏は、本誌の取材を受けた際、こう語った。
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