西園寺一晃(工学院大学孔子学院学院長)
西園寺一晃氏
今年秋に中国共産党18回党大会(18大)が開催される。私は3つの面で注目している。1つは人事で、中国にとって大変重要なこれからの10年間を指導する陣容が決まる。2つ目は経済運営だ。中国経済は30数年以来驚異的な成長を遂げてきたが、国内外の新たな環境変化の中で転換が迫られている。3つ目は対外政策である。冷戦崩壊後、新たな世界秩序はまだ確立されていない。中国が責任ある大国として、どのような対外戦略を打ち出すのか、どのような世界を望むのか、非常に興味深い。
封建主義、帝国主義、買弁資本(列強侵略者と結託した資本家)という、中国人民を苦しめてきた3つの敵を打ち倒し、独立を勝ち取った中で中国共産党は決定的役割を果たした。これは誰も否定できない。さらに文化大革命の後遺症から脱し、中国を改革開放という現代化の方向に導き、人々の生活を飛躍的に向上させたのも中国共産党である。これも歴然とした事実である。30数年の奮闘を経て、中国は驚異的成長を遂げた。GDPは日本を抜き、世界第2の経済大国となった。しかし中国革命は未だ道半ばであり、依然として発展途上国である。この発展途上国の中国を「中進国」に引き上げるのが新指導部の役割であると思う。国の発展の基礎は経済である。しかし、経済の発展とともに、国民の意識、モラルなど、素養の面でも飛躍的向上がなければ真の発展とは言えない。その意味で新指導部の力量が問われる。
中国経済はいま転換点に立っている。発展途上において、幾つかの困難に直面している。格差の拡大、環境破壊、エネルギー不足と効率の問題などだ。さらに内需と外需のアンバランスは、産業構造、貿易構造の転換を求めている。GDPに占める消費(内需)の割合は、米国70%台、日本60%台、中国は40%台だ。内需を掘り起こさないと更なる成長は難しい。そのカギは都市化にある。これまで立ち遅れていた内陸部農村地帯の都市化が進めば、大きな需要が生まれ、更なる経済成長の原動力となる。それには政治的安定が不可欠だ。
対外戦略に大きな変化はないと思うが、国際情勢は刻々と変化し、その変化に対応しなければならない。中国は安定成長を続けると思う。そして、近い将来確実に強国になる。人類の歴史上、多くの強国が出現した。ローマ帝国から近現代のスペイン、ポルトガルから英国、フランス、ロシア、ドイツ、イタリア、日本、そしてソ連、米国。これらの国には共通点がある。それは対外侵略、覇権主義を行ったことだ。中国はどうだろう。もし強国になっても対外侵略を行わず、覇権主義をやらなかったら、人類史上初の「平和的強国」の出現となる。そのためにも、新指導部には平和的発展の具体的道筋をつけ、平和教育の強化を図ってほしい。
「北京週報日本語版」2012年10月31日
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