個人口座の不足はどのように生じたか?
中国は現在、複数の養老金制度を実施している。政府機関と事業単位(政府財政によって運営される事業体)の退職者養老金は国の財政から統一支給され、都市部の企業従業員に対しては企業と従業員本人が一定基準で納める「保険料納入型」共済養老保険制度が取られている。農民に対して採用されている新型社会養老保険は2009年から始まったもので、中央が確定した新型農村社会基礎養老金基準は1人当たり毎月55元で、地方政府は状況に応じて適宜追加支給ができる。
現在、「空口座」問題は主に都市部の企業従業員向け養老制度で起きている。この養老金制度は1996年にスタートしたものだが、当時中国はちょうど国有企業に対する市場化改革を行っており、企業従業員養老金は国の支給から市場化された養老保険制度に切り替わった。
当時すでに3000万人余りの企業退職者がおり、この部分の負担を放り出すことはできなかった。養老保険制度が確立する前は、企業の従業員は基本的に保険料を支払う必要がなかったため、この時点で退職していた人には養老保険基金の従業員個人口座がなかった。そこで、この部分の退職者への養老金支給を養老保険社会共済口座から支払うことを制度で規定した。しかし社会共済口座だけでは当期支給をまかなえず、また各地の財政力も違ったため、実際には多くの地域で「手持ち現金による支払い」の形を取らざるを得なかった。つまりは個人口座資金の流用だ。今働いている人が支払っている養老保険料でこれまでの退職者への養老金を支給し、個人口座には金額の記入だけしたのである。こうして、個人口座の見かけの記帳残高2兆5000億元が出来上がったのだ。
個人口座資金流用の問題を解決するため、中国は2000年から個人口座の見かけの残高と実質残高を一致させる試みを始めた。しかし2011年末現在、個人口座の実質残高は3000億元に満たず、通帳記入額との差額は依然2兆2000億元以上に達している。これが中国養老金の「不足」であり、しかもこの不足はずっと補充されていないだけでなく、これからも増え続ける傾向にある。中国社会科学院のデータによると、2008年~2010年で「空口座」は1兆4000億元から1兆7000億元になり、3年間で3000億元増えた。2010年~2011年は、1年間だけで「空口座」が5000億元増えている。
2012年、中国は新型農村社会養老保険、都市住民社会養老保険の全面普及を実現すると見られる。写真は都市住民社会養老保険の支払証明(張春雷撮影)
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