社会民主党党首 土井 たか子
今年は、日本と中国の国交が回復して二十五周年に当たる記念すべき年であります。諸先輩の長年にわたる苦労が実って、四半世紀前の秋に北京で日中共同声明が発表された時の感激は、いまなお忘れがたいものがあります。
その後、一九七八年の日中平和条約締結を経て、両国の関係は順調に拡大発展してまいりました。世界の平和のため、とりわけ東アジアの平和を保つためには、両国の関係が良好で安定していることが不可欠であることは、言うまでもありません。私は中国を訪れた折にも、中国から見えたお客さんと懇談する折にも、常にそのことを確認してきました。
国と国との関係においても、個人と個人の関係と同様に、約束したことをきちんと守るということは、最も基本的なことです。いかなる問題も、日中共同声明と日中平和友好条約に基づいて、対処しなければなりません。日米ガイドラインの見直し論議にあたっても、社会民主党は、日米安保条約のいわゆる極東条項の解釈にあたっては、一九六〇年の日米安保条約改定の後に締結された日中共同声明と日中平和条約の諸条項を尊重するのは当然であり、「台湾をガイドラインの適用地域から除外すべきである」と主張してきました。このことはすでに多くの識者が指摘しているところであり、橋本政権は断じてこの点をあいまいにしてはなりません。
また、社会民主党は「日米か日中か」というような二者択一的な視点ではなく、「日米中トライアングル」による意見交換の場を日頃からつくっておかなければならないと、考えています。様々なレベルで、三国の関係者が率直に述べあうことは、これから、ますます重要になってまいります。
また今年の七月一日には、イギリスの香港統治に終止符がうたれ、香港は中国に返還されました。一九九九年に実施されるマカオ返還とともに、二十世紀の掉尾を飾るにふさわしい記念すべき出来事であり、その重要な歴史的意義は明らかであります。
香港は、アヘン戦争以来、帝国主義と植民地支配の典型的な事例でありました。アヘン戦争からは、およそ百五十年が経過しましたが、必ず訪れる「九十九年間の租借終了」の時点を見据えてじっくりとことをすすめる、中国外交の息の長さにはまことに驚くべきものがあります。
香港返還交渉をまとめあげた鄧小平氏の御逝去後の三月中旬に、私は中国を訪問して江沢民国家主席、喬石全人代常務委員長をはじめとするリーダーの方々とお話をする機会を得ることができました。日中両国が協力して、アジア太平洋の新時代を切り開くことはまことに重要であります。国交正常化二十五周年に当たって、社会民主党は、日本社会党の時代から築きあげてきた中国との友好の絆を今後とも大切にし、二十一世紀へのよきパートナーとして共に努力していく決意であります。
「北京週報日本語版」1997年No.39
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