ほとんど90度の断崖絶壁で撮影する喬喬さん (撮影馬卓)
夢は今も黄河流域に
「黄河の下流になればなるほど、人が増え、化学工場が増え、汚染がひどくなります。寧夏回族自治区のトングリ(騰格里)砂漠では、多くの化学工場が廃棄物を砂漠に捨て、黄金色の砂漠は黒くなってしまいました。内蒙古自治区の西オルドス工業区では、あちこちに露天の炭鉱があり、大気中には煙とほこりが充満し、地下水はひどく汚染されています。山東省の黄河デルタ国家級自然保護区では、独特の湿地資源を利用して観光地を開発している上に、採油をし、工場を建てています。どこもかしこもこうした現状なのです……」
喬喬さんは、こうした情景を目にするたびに心が引き裂かれる思いがすると言う。自身は単なる記録者であり撮影者にすぎず、目の前のすべてを以前のように戻す力はない。しかし善良な正義の心、そして物事を観察する目と、事実を記録するカメラを持っている。喬喬さんは、数年来の真実の記録を通じて、母なる川の危機を大きな視野に立って広く紹介し、世の中に警告を発しようとしている。
この数年間で、喬喬さんは自分でも分からないほど多くの場所を撮影し、多くの靴を履きつぶしてきた。「2000時間以上の素材を最終的に90分の映画にまとめようと思っています。国内外で公開し、映画の形で全人類に『映像作品で生態環境を保護する』という理念を伝えたい」。
つらい撮影や苦しい生活で、苦況に陥ることもある。今直面している困難について尋ねると、喬喬さん少し申し訳なさそうにこう語った。「今一番必要なのはオフロード車です。荒れ果てて人家もないところによく撮影に行くし、大量の器材を持っていかなければならないから。1日数百元のレンタカー料と撮影器材のレンタル料などを足すと、1日の撮影コストは数千元になってしまいます」。社会からの賛助を求めてきたが、残念なことに今のところ実際に手を差し伸べてくれる企業はない。
「あとどれくらい黄河撮影を続けるか分かりません。もしかしたら1、2年かもしれないし、一生撮り続けるかもしれない。これから何年かは、人に関するストーリー映画を撮りたいと思っていますが、自然環境関係の映像撮影は一生続けていきたい。最大の夢は、映像作品で自分の思想を表現することです」。
喬喬。北京の若手映画監督。2008年北京電影学院卒。2011年第2回中国国際民間映像フェスティバルにおいて4分間のショートフィルム『家園』で「最優秀ショートフィルム賞」を受賞。人知れず黄河の野生動物と環境保護を撮影していたが、受賞以来脚光を浴びるようになる。大学卒業後は主に黄河流域の野生動物を撮影し、黄河湿地の生態変遷を映像に収め、大自然と人間の物語、人類社会の黄河に対する汚染、破壊などを伝えている。「カメラで真実を語る人」と称えられている。
「北京週報日本語版」2012年4月13日
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