土楼建築文化の2つの見どころ
廈門から高速で一路西へ。南靖出口で高速を下り、険しい山々を越え、文旦の香り漂い柿の実が赤々と実る山里を通り過ぎ、3時間ほど探し続けてようやく「四菜一湯」の見える高台にたどり着いた。「四菜一湯」とは4つの料理と1つのスープという意味で、この高台から見える5つの土楼を例えた呼び名だ。青々とした山に抱かれ、段々畑に囲まれた山間のくぼ地には、4つの円形土楼が真ん中に1つある方形土楼を囲んでいる。その様子がちょうど「四菜一湯」に見えるのでこの名がつけられた。
「四菜一湯」からおよそ40分ほどのところにも、土楼の「名優」が2つ建っている。1つは中国国家郵政局の切手デザインになったこともある承啓楼。もう1つは「土楼王子」と称えられる振成楼だ。承啓楼と振成楼はいずれも典型的な円形土楼で、外側の土楼は4階建てで、高さが16メートルある。外壁は土と竹や木を用いた構造で、内側はレンガと木で作られている。
承啓楼は、大きな円が小さな円を囲むように四重の同心円状になっている。全部で400部屋で、中央には土楼の核心である祖廟がある。承啓楼の中には現在50世帯余り200人以上が住んでいる。1階から4階までが1つのユニットになっており、ここに1家族が住む。1階は応接間兼食堂、2階が食糧倉庫、3~4階が寝室だ。
振成楼も山間の谷にある。建物の前には広い広場があり、左右は青竜と白虎の2つの山に囲まれ、背後には山並みが続き、入口の前を曲がると池が斜めにしつらえてあり、美しい風景が印象的だ。八卦の考えにしたがって建てられた振成楼は、内部が放射状に八等分されている。二重の円楼で、中央には舞台など多くの機能を備えた議事堂がある。通常、土楼の床は木板構造で、人が動くとギシギシときしむが、振成楼の床は耐火レンガが敷き詰められ、人が動いても音がせず静かだ。また土楼の入り口は通常2つだが、振成楼には「天・地・人」の3つの入り口が設けられている。さらに、通常の土楼では中庭に1つ井戸があるだけだが、振成楼には八卦図の太極の2つの卦眼(太極魚眼)のところに2つ井戸が掘ってあり、高と低、陰と陽、清と濁が対をなす実に見事な作りになっている。八卦に基づいて八等分された内部は1階から4階までレンガの壁で仕切られ、壁に設けられた木の扉を閉じれば独立した空間になり、開ければ1つにつながる。小単位である家族と大きな社会とが調和し統一がとれた構造になっている。
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