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評論  
「遠交近攻」主張の野田内閣、中国に対しては利益優先

 

■米国にはぐっと我慢

同じく日本の「国益」を守る立場から、民主党の実力者で長老の小沢一郎元代表は、野田首相が準備を整えず、国民生活を守る措置をとる前に米国の指揮棒に従ったことに強い不満を表明した。

現在金権政治スキャンダルの窮地に深くはまっている小沢氏は、百戦錬磨の老将だ。「普通の国」論を提唱した小沢氏は、その政治的立場と保守色について言えば、「戦後政治の総決算」を唱えた中曽根康弘元首相に次ぐ、改憲派の急先鋒だ。「政官財」癒着と「集金術」を得意とする小沢氏は、有権者心理も知り抜いている。まさに財界の膨大な資金を後ろ盾に、「生活第一」の旗印を高くかかげ、米国とより「対等」な関係を目指すと公言し、世論を盛り上げる中、小沢氏とその相棒の鳩山由紀夫氏は2009年の衆議院総選挙で自民党を打ち破り、輝かしい勝利をおさめたのだ。

この点から見て「生活第一」と「米国とのより対等な関係」の旗印が、民主党の政権奪取に大きく貢献したことは確かだ。だが政権獲得後の実際の行動から見て、この感動的な選挙時の二大旗印は、空手形だったととうに認定されている。鳩山首相とそのブレーンが提唱した「東アジア共同体」と「中米日正三角形論」がどちらも立ち消えになったことが、この点を十分に物語っている。

真面目に分析するなら、鳩山、小沢両氏が米国から少し距離を置こうとしたのは、戦後以来の堅固な米日軍事同盟関係から真に脱するためではなく、その枠組みの中で比較的「対等」な主従関係を目指そうとしただけだ。わかりやすく言えば、鳩山氏が普天間米軍基地の国外移設、最低でも沖縄県外移設を求めたのは、有権者に申し開きのできるよう、だだをこねるポーズをとってみたに過ぎない。こんな小さな要求が、ホワイトハウスに情け容赦なく言下に拒絶されるとは思っていなかったのだ。こうして形ばかりで役立たずの鳩山氏は、恨みを抱きつつ下野するほかなかった。

後任の首相に収まったのは、輪をかけて実力がなく、口先だけで、在任期間を延ばすことを最大の政治業績と見なす菅直人氏だった。菅氏の対米政策は実は「鳩山時代にできた両国間の亀裂の修復に尽力する」の一点に尽きた。

こうして野田首相が、お高くとまったホワイトハウスに向き合う番になった。予想に違わず、野田首相はいとも恭しく、あれこれとおとなしく従う姿勢をとっている。だがこの戦々恐々の姿勢は、出だしから肘鉄を食らった。野田首相は国内で反対の声が高まる政治的リスクを冒して、米日首脳会談でホワイトハウスの主人にTPP参加の意向を伝えた。だが会談後ホワイトハウスは「野田首相は全ての製品とサービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せることに同意した」と発表した。このことで、曖昧な文言を使うことで、ホワイトハウスの歓心を買いつつ、「大問題ではない」と国民を安心させようともくろんでいた野田首相は間違いなく追い詰められた。国内各方面から強い批判にさらされた野田首相は、発言を否定し、ホワイトハウスに訂正を求めたが、要領を得なかった。ホワイトハウスにしてみれば、TPP交渉への参加を約束すれば、言うまでもなく全ての項目が自ずと対象となるのであり、選り好みは認められないのだ。完全拒絶というホワイトハウスの冷淡な姿勢を前に、野田首相は表に出せない事情もあったが、ぐっと我慢して言葉を飲み込み、ホワイトハウスの勝手を受け入れるほかなかった。結局のところ、米日間に「対等」と呼べるものなどないのである。

■国内の幾重もの障害

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