卓南生教授
日本の野田佳彦首相は正真正銘の新世代のタカ派だ。軍人家庭の出身であることからも、保守政治の後継者の特訓所である松下政経塾の第1期卒業生という背景からも、この点は誰にも疑いの余地はない。さらに「A級戦犯は戦犯ではない」「首相が靖国神社に参拝するのは当然」といった、政界入り以来の様々な急進的言動もあり、早くから「タカ派の中のタカ派」のレッテルを自ら鮮明にしている。(文:卓南生・北京大学客員教授、龍谷大学名誉教授。「新華網」掲載)
それでも、2カ月余り前に民主党政権の手のつけようのないごたごたを菅直人前首相から引き継いだ際、多くの政治評論家は野田新首相に対して「その動静を静観する」構えをとった。
第1に、野田首相は与党内での勢力が弱く、見込み薄だったことがある。彼は党内各派閥の合従連衡の混戦の中、ほんの手違いで誕生した首相なのだ。小派閥のリーダーで勢力の弱い野田首相は、まず足場固めのために党内各派閥をなだめ、抱き込まなければならない。独断専行、超タカ派色を余り早く露わにすることや、いかなる急進的政策も、最善の策でないことは明らかだ。
第2に、大地震、原発事故、不景気という「国難」を前に、野田首相にとって喫緊の課題は経済政策にしっかりと取り組み、日本経済のこれ以上の下降を阻止することだった。そのためには自らが信奉する価値観外交を公然と推進するよりも、急速な経済成長を続ける中国と良好な相互関係を保った方が良い。就任後すぐに在任中は靖国神社を参拝しない方針を自ら表明したのは、まさにこのメッセージを隣国に伝えるためだった。
■中国牽制を意図
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