孫中山はなんどもたのんで、とうとうその雇い人の老婆を説きふせ、カントリーのところへ手紙をとどけてもらいました。カントリーは、すぐにいろいろな手を講じてかれを救いだしました。孫中山は釈放された後、このイギリスの友人のところに住むことになりました。けれども危険は去らず、どこへ行くにもいつも尾行がついていました。敵の追跡から逃れるために変装しなければならなかったこともなんどもありました。

一八九九年、かれは日本へ行って、二度目の蜂起を積極的に準備しました。この蜂起は、一九〇〇年の義和団運動がおこった後まもなく、恵州でおこされたもので、孫中山みずからこの蜂起を組織しましたが、兵器が指定された場所に期限どおりにとどかなかったため、またも失敗してしまいました。

二度も失敗しましたが、孫中山はすこしも気を落としませんでした。このあとの数年間、かれは王党派にたいする論戦を指導して、かれらの観点をうちやぶりました。同時に国外であちこち走りまわり、華僑のあいだで革命活動のための資金を集めたり、いっそう多くの支持を求めたりしました。革命組織を発展させるため、かれは一九〇五年に日本に渡りました。日本で、かれは興中会と他の二つの反清朝団体（黄興と宋教仁が指導する華興会および徐錫麟と章炳麟が属する光復会）とを合併して同盟会を結成しました。こうしてブルジョアジーと小ブルジョアジーの革命団体の統一戦線の組織がつくられました。その綱領は、清朝政府の打倒、ブルジョア民主共和国の樹立、地権の平均でした。

一九〇六年、瀏陽、醴陵、萍郷の三県が境を接するところで、六千余名の炭鉱労働者がまた蜂起（ほうき）をおこしました。この炭鉱労働者たちは武器をとる直前に同盟会に加盟していました。指導者の一人である劉道一は、この蜂起で捕えられて、犠牲になりました。

一九〇七年、孫中山は中国の隣国ベトナム（当時はアンナンとよばれ、フランスの植民地でした）に、指導機関をもうけ、四度にわたる蜂起をおこしました。そのうちの二度は広東省の東部で、一度は広東省の西南部で、もう一度は孫中山がみずから指導して、ベトナムに近い広西省の鎮南関（いまは「友誼関」と呼ばれる）を攻撃したものです。革命軍は三つの砲台を占拠しましたが、援軍がおくれてやってこず、またも撤退せざるをえませんでした。

一九〇八年に、広東省の西南部と雲南省の河口で二度蜂起をおこしましたが、これも失敗しました。原因は、その他の多くの場合と同じように、革命の政治面をまったく軽視したからです。たんに軍事的手段にだけたよるのでは、失敗は避けられません。

かれは自分の使命をはたすために、すでに八度も失敗してしまいました。清朝政府のたびかさなる要求で、フランス人は孫中山をベトナムから追いだしました。かれはシンガポールへ行き、一九〇九年にふたたびアメリカへ資金集めに行きました。一九一〇年、かれがまだアメリカにいるとき、かれの同志たちは広州を攻めましたが、ひどい失敗をこうむりました。孫中山はシンガポールにもどったとき、同志たちがたびかさなる挫折で、すっかり意気消沈していることを知りました。かれはペナンで会議を開いて、闘争をつづけていくようみんなの革命精神と勇気をふるいたたせるとともに、これからの革命の戦術について討議しました。

革命の資金がいつも不足していたため、孫中山は資金の調達に多くの時間と精力をさきました。かれはまたアメリカに行き、華僑と留学生のあいだで宣伝と資金調達の活動をおこないました。かれのいないあいだに、かれの同志たちはまた広東省を奪い取ろうとしました。これが一九一一年三月二十九日の黄花崗烈士の蜂起です。蜂起は表面的に失敗に終わりましたが、しかし、革命勢力のたえまない攻撃によって、清朝政府の支配は日一日とゆらぎはじめました。

一九一一年、孫中山は同志たちと十一度目の蜂起をおこしました。この蜂起の結果はこれまでとは異なり、中国の歴史の進路を変えました。一九一一年（辛亥の年）十月十日、革命党が指導する武装勢力は、武昌の蜂起で武漢三鎮を占領しました。すると、各省がつぎつぎとこれに呼応し、革命運動を支持しました。全国人民が心の底から憎しみきらっていた清朝政府はついにうち倒され、二千年にわたる封建専制の政体は終わりをつげました。孫中山は革命をはじめたときから、当時の中国の状況のもとに存在していた主要な矛盾を解決する必要性、つまり、武力で封建王朝の支配をくつがえさなければならないということをしっかりつかんでいたのです。