▽「第2の敗戦」を信じない日本人
日本を訪れた時、沖縄、長崎、東京など各地で「がんばれ日本!」の標語を眼にした。海辺のヨットや、映画館のポスターなどにその言葉は書かれていた。東日本大地震後、日本のあるメディアは「日本はまさに第2の敗戦を迎えた。未曾有の大震災が日本人全体の危機感を誘発した」と報じた。
しかし、この報道を除き、日本社会に悲観の影は見当たらない。取材をしたほとんどの日本人が、「第2の敗戦」という言い方は大げさだと感じていた。彼らは確かに、日本の政治の混乱と、「リーダー不在」の現状に失望を感じてはいるが、こんな状況でも生活が安定していることにむしろ誇りすら抱いている。
定年退職前は長崎のある自動車会社で理事を務めていたという富永さん(78)は「日本は戦後、オイルショック、プラザ合意による円高など、大きな事件を経験してきた。これらの事件が日本経済に与えた打撃は今回の大地震よりもはるかに大きい」と語る。
荒井広幸参議院議員は、「現在の日本は道に迷った船のようだ。これまでと同じように物質的な豊かさを追い求めて航海を続けていくのか、精神的な豊かさを求めて進んでいくのか迷っている。しかしこれは日本社会が成熟した証拠とも言える。中国と比べれば、日本はニュースの少ない国だ。これは日本が安定しているからだ」と語る。
これに対し、日本に住む中国人は別な側面から日本の変化を見ている。 東京在住の華人学者の庚欣氏は「20年前、ある日本人学者が意気揚々と『日本に大地震が来ないかな、そうすれば発展のきっかけになる』と言っていた。当時の日本は若者と同じで、一度病気にかかれば体に気を使うようになり、より健康になれると考えていた。でも今の日本は年老いてしまった。大地震発生後、日本社会でそのような大言壮語の類が聞かれることはなかった」と語る。
もう1つの大きい変化は、日本における中国人旅行者への期待度の高まりだ。公共の場所には中国語の表示が目立つところに示されるようになったし、観光地の売店も、デパートの店員も、簡単な中国語なら話すことができるようになった。しかしこのことはむしろ、中日両国を十数年にわたって悩ませてきたある問題を突出させている。経済的関係はうまく行っているのに、政治的関係はなぜ疎遠なままなのだろう?
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