北京のショッピングセンターにて
新疆と青海省に向かう前、北京の街を歩いていると北京の大学に留学中の息子が足に違和感を覚え、急にサンダルを買うことになった。ちょうど目の前のショッピングセンターの中にユニクロがあり入って見たが、残念ながらサンダルは置いていなかった。しかしこの時対応した若い中国人女性店員の対応には目を見張るものがあった。
非常に機敏な動作、すっきりした笑顔、そしてはっきりした対応。更には申し訳なさそうに「サンダルは置いていない」と告げながら、即座に「3階でサンダルを売っています。エスカレーターはこちらです」と大きな動作で分かり易く我々を出口まで誘導してくれた。これはユニクロの日本的なサービスが中国人にも理解され、実践された好事例であろう。
一方3階に上がり、靴のコーナーに行くと中国人のおばさん店員がいきなり「あんた、これ買った方がいいわよ。材質もいいし、割引もあってお得」と息子に向かってまくし立てて来た。息子は初めビックリしていたがそのうち要求を述べ、おばさん店員ともだんだん打ち解け、更にこちらが日本人だと分かると彼女の対応はかなり柔らかくなり、あれこれと世話を焼いてくれ、結局勧められた物を買うことになった。
この2人の店員、サービスの点で普通の日本人ならユニクロ店員に軍配を上げるだろうが、私は個人的にこの3階おばさん店員が捨てがたい。一般的に日本人は「相手によって対応を変えるのは失礼」という概念があり、誰にでも一律平等のサービスを心掛けるが、必ずしもこれが良いとは言い切れない。むしろ相手によって柔軟に変化し、相手の求めている物をいち早く察知し、対応するサービスの方が人々の印象に強く残るのではないだろうか。この3階おばさんは、もしかすると一流のセールスウーマンなのかもしれない。
中国は将来サービス大国に?
そういえば、今回の旅で北京の中級ホテルにチェックインすると何故か窓のない部屋に入れられた。携帯も繋がらなかったため、窓のある部屋に交換してもらったのだが、実はこの部屋、日中窓を開け放しているためか、蚊が大量に入っていて、夜は刺されて眠れなかった。もしやするとフロントの女性はこの状況を考慮して、敢えて窓のない部屋を外国人にくれたのかもしれない。
しかしもしそうであれば、サービスとは相手に分からせて初めて意味を成すものであり、キチンと説明しなければよいサービスとは言えない。中国には全般的に言って、言われてから対応するのではなく、もう少し先に状況を説明すると言うサービス、習慣が欲しい。一方日本人側にも、仮に前述のおばさんのように初めがぶっきら棒なサービスに出くわしても、それに対応できる慣れを求めたいと思う。
サービスは所詮人が考え、行うもの。北京では、その意味でのサービス向上と相反するような画一的でマニュアル化されたサービスをするレストラン・百貨店チェーンが増加しているが、これにはどうも馴染めないものがある。ハードとソフト両面が発展した企業が生き残る時代にどう対処するのか、企業の真価が問われている。現時点では、徹底した組織力でサービス面をリードする日本。しかしもしその個々の持つ能力が如何なく発揮されれば、中国は将来サービス大国になっていくかもしれない。(写真はすべて筆者写す)
筆者プロフィール
すが・つとむ 東京外語大中国語科卒。
金融機関で上海留学、台湾2年、香港通
算9年、北京同5年の駐在を経験。現在は
中国を中心に東南アジアを広くカバーし、
コラムの執筆活動に取り組む。
「北京週報日本語版」2011年9月5日
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