米国債の危機は回避されたが、その債務返済能力には依然として疑いの声が上がっている。中国の格付け機関、大公国際資信評価有限公司は3日、米国の自国通貨建て、外貨建て格付けをAプラスからAに引き下げ、見通しを「ネガティブ」としたと発表した。「人民日報」海外版が伝えた。
同公司は、「米連邦議会は政府の債務上限引き上げをめぐる決議を採択し、引き続き新たな借り入れで前の借り入れを返済できるようになったが、国の債務の増加速度が経済・財政収入の伸びを上回るという基本的状況は変わっていない。このことは米政府の債務返済能力の一層の低下に向けたターニングポイントとなった」との見方を示す。
▽米政府の債務返済能力低下は避けられない
西側諸国の格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・ サービスやフィッチ・レーティングが依然として米国債への最上位格付けを維持している一方で、大公国際は米国政府の債務返済能力が低下しつつあると明確に指摘した。今回の格付け引き下げの具体的理由は以下のとおり。
(1)米政党間の争いにより、政治体制の弊害が明るみに出た。このことは、米政府が国のソブリン債務危機を根本的に処理するのが難しく、政治・経済制度による債権者の利益保障が十分でないことを示している。
(2)債務の上限引き上げで政府のデフォルト(債務不履行)は一時回避されたが、国の債務返済能力は改善されておらず、政府の債務負担は引き続き重くなり、米国のソブリン債務危機は深刻化すると見られる。
(3)米国の財政赤字削減の速度は、新たな債務の増加速度を大きく下回っている。支出超過の財政政策では、米政府の債務水準は必然的に引き続き上昇することになる。
(4)米議会は、国の経済成長の原動力不足を根本的に解決するための建設的決議を打ち出していない。これは米政府がより多くの富の創造を通じて経済成長率の低さと財政赤字、債務増加が債務返済能力に及ぼす根本的な影響を解決することができず、債務返済能力の低下が避けられないことを示している。
中国国際経済交流センター情報部副部長の徐洪才教授は、「新興格付け機関である大公国際は、米国の三大格付け機関による独占を打ち破り、真っ先に独自の意見を発表した。これは、世界が米国経済の真の発展情況を理解するのに役立つ。格付け機関は公正、独立、客観を貫き、市場参加者が理性的な選択をする上で役立つ情報を提供するべきだ。しかし、米国の格付け機関は依然として自国の国債に対する格付けを維持している。この目的は世界で低コスト融資を継続させ、世界の資源を安く利用するためだ」と述べる。
▽世界に真の米国を知らしめる
大公国際は公告の中で、「米議会は債務の上限引き上げを承認した。これは、国の債務返済能力に影響する各要素が長期間にわたって好転しないと見られ、富の創造能力と巨額の消費の不均衡という局面が根本的に変わらないだろうということを示している」と分析。また、「米国は今後、QE3(量的緩和政策第3弾)を始動するだろう。これにより、世界経済は全面的に危機に陥り、このプロセスの中で米ドルの地位が根本的に動揺するだろう」と推測した。
大公国際の董事長兼総裁である関建中氏は「AAAはリスクがないことを示し、Aはリスクがあることを示す。現在、米国への投資にはリスクがあると世界に発信しているのは大公国際だけだ。これは、米政府に対する警告となるだけでなく、債権者のリスク回避にもつながる。大公国際が『米国の債務上限引き上げは、米政府の債務返済能力下降のターニングポイント』という独自の見解を発表したのは、米国はもはやかつて言われたような『投資の安全港、避難港』ではなくなったということを世界に知らしめるためだ」と語る。(編集SN)
「人民網日本語版」2011年8月5日
|