■「中国の脅威」の自己矛盾
中国社会科学院日本研究所の呉懐中研究員は、新防衛白書は中国に対する4大「不安」をでっち上げていると指摘する。第1に、「拡大」「常態化」などの新しい表現を初めて用い、東中国海や南中国海における中国の活動を大げさに書き立てている。第2に、昨年の中日船舶衝突事件を筆頭に、中国のいわゆる「高圧的対立」姿勢を際立たせている。第3に、中国の国防政策と軍事動向を絡め合わせ、中国が「国際規範を遵守すること」が重要だと初めて指摘している。第4に、「南中国海の動向」という項目を新たに設けている。これらには中国の軍事力およびその動向を大きな「脅威」、または実際以上の「脅威」と誇張する狙いがある。
呉氏は「これは第1に日本の安保政策調整と軍事計画の必要性によるものだ。日本は昨年の新防衛大綱で、防衛力の重点を南西諸島にシフトする方針を打ち出した。もし南西方向に『脅威の源』がなければ、こうしたシフトは不必要に映ってしまう。第2に、日本政府は財政難にある。防衛族は予算を獲得するため、絶えず中国などの隣国を口実にする必要がある。第3に、苦境に陥った日米同盟を強化する必要があるが、『米国の抑止力』によって『中国の脅威』に対応することがその最良の理由となっている」と指摘する。
昨年と今年の防衛白書は菅直人内閣が了承したもので、いずれも「中国の脅威」を余すところなく誇張しているが、これは民主党の政権獲得前後の自己矛盾をはっきりと示すものでもある。総選挙時に有権者に約束した「アジア重視」、「東アジア共同体」推進などの方針は白書には見られず、代わりに「中国の脅威」を大げさに書き立てている。菅内閣支持率が最近20%以下に落ち込んでいるのは、政権公約を果たしていないことが大きい。これは内政だけでなく、外交も然りだ。
民主党政権は現在も自己矛盾を呈している。日本経済振興のため中国市場を重視し、観光業促進のため中国人観光客の増加を歓迎すると表明する一方で、自国の最大の貿易相手国を「脅威」と見なす。これは「利益を得るだけ得ると、すぐに相手を罵る」行為にほかならない。
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