一九七九年一月三十一日午後三時半、CBSのウォルター·クロンカイト記者、PBSのジェームス·レーラー記者、ABCのフランク·レイノルズ記者、NBCのデービッド·ブリンクリー記者は鄧小平中華人民共和国国務院副総理にインタビューした。その内容はつぎのとおり(文中敬称略)。
―編集部
クロンカイト 副総理、あなたに会ってインタビューする機会に恵まれ、感謝にたえません。
鄧 まずわたしにひとこといわせて頂きたい。
クロンカイト どうぞ。
鄧 アメリカの三大テレビ放送網とPBSが、テレビを通してアメリカ市民と会う機会をあたえてくれたことに感謝します。まず、偉大なアメリカ人民に心からのあいさつをおくります。
中米両国人民はずっと友好的につきあってきました。いま中米両国は関係正常化を実現し、われわれ両国の交流と協力を促進するすばらしい前途が開けました。
われわれ両国人民の利益と世界平和の利益は、われわれの友好協力関係の発展を要請しています。
カーター大統領の招きで貴国を訪問したわたしには三つの使命があります。第一はアメリカ人民に中国人民の友情を伝えることです。第二はアメリカ人民を理解し、あなたがたの生活を知り、あなたがたの建設面の経験を理解し、われわれに役立つすべてのものを吸収することです。第三は貴国の指導者と両国関係の発展、世界の平和と安全の維持について幅広く意見交換することです。
わたしとカーター大統領その他のアメリカの指導者との二日間にわたる会談の結果は満足すべきものであったことをアメリカ人民にお伝えしたい。カーター大統領夫妻は華国鋒総理の招請を受諾し、かれらが適当と思う時期に中国を公式訪問することになりました、かれらは中国で心からのもてなしを受けるでしょう。
では、みなさんの質問に答えましょう。
クロンカイト どうもありがとう、副総理。あなたは先週《タイム》誌のヘドリー·ドノバン記者とのインタビューで、日本、アメリカ、中国が、ソ連の覇権主義または侵略とみなされる行動を封じるための条約を結んではどうかと示唆されました。あなたは、アメリカの指導者に公式にこの提案をしましたか。もしそうなら、どんな反応がありましたか。
鄧 わたしはそういう提案はしませんでした。わたしはただ、ソ連の覇権主義にたいしてじっくり取り組むべきだ、といっただけです。覇権主義に反対し、世界の平和、安全、安定を守るため、アメリカ、ヨーロッパ、日本、中国およびその他の第三世界諸国は連合し、こうした戦争の危険をはらむ挑戦に真剣に対処しなければならないと思います。われわれは、条約とか同盟とかいうものを必要としない。われわれが必要としているのは情勢にたいする共通の理解と共通の努力です。
クロンカイト 副総理、あなたのアメリカでの談話、あなたがこれまで言明してきたこと、そして北京を訪れた人にたいする多くの談話とあなたの前任者が発表した談話は、あなたがたはアメリカがソ連の脅威の本質を理解しているとみていないことを表明しています。わたしはあなたがたがアメリカの指導者よりソ連による脅威をより理解していると思っている理由がわかりません。
鄧 それはアメリカの問題であり、わたしが答えることではありません。しかし、アメリカがより効果的、より強力な措置を講じて覇権主義の挑戦に対処するよう願っていることはたしかです。
レーラー 副総理、中国はカンボジア情勢にかんがみ、ソ連に後押しされているベトナムと戦争するつもりですか。
鄧 この問題は何度もわたしにむかって提起されています。わたしはみなさんにいっておきたい。中国人は見込みのないことはいいません。われわれのいかなる行動も、熟慮したうえでのことで、われわれはいかなる軽率な行動もとることはありません。全地球的覇権主義にたいしても、地域的覇権主義にたいしても、われわれは確固たる立場、だんこたる態度をとるでしょう。
同時にわたしはみなさんに告げたい。ベトナムは公然と多数の軍隊をくりだしてカンボジアに進攻しているばかりでなく、中越国境でもつぎつぎと国境事件をひき起こしており、こうした事態はなお一段と発展しつつあります。
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