廖奔　傅謹

ユネスコは１１月１６日、中国による京劇の無形文化遺産への登録申請を審議、採択し、京劇は申請に成功した。喜びに沸く中、さらに冷静に認識すべきは、遺産登録の申請は第一歩に過ぎないということだ。

『貴妃醉酒』の楊貴妃を演じる梅蘭芳

◆登録は責任に過ぎず栄誉ではない

２０１０年に遺産登録申請が成功したことで、もっと早くに無形文化遺産に登録すべきだったとの思いがようやくかなった。京劇は東洋五千年の古国文化の近世における結晶であり、伝統芸術の美を高度に凝結させ、しかも内容の最も豊かな人類の無形文化遺産の代表作の一つであり、故にその名に最もふさわしい。

京劇は清朝末期から発展を遂げて最も成熟し、影響力の最も大きく、最も広まった戯曲である。北京の劇場や宮廷の舞台などで相対的に標準化され、厳格に規格化され、高度に技術化された様式が定まると、その荘重さ、洗練さ、端正さ、雄渾な美学的品位、精緻ときめ細かさ、声もよく情調たっぷりな表現力で世に高く評価され、舞台に上がるまでになった。その風雅な姿で百数十年、多くの地方劇がその周囲に集まった。京劇は「国劇」とも呼ばれる。

中国には現在、２００種を超える伝統戯曲がある。その中で最初に無形文化財に登録されたのが昆曲。次に粤劇（広東劇）で、京劇は三番目となる。とはいえ、京劇はむしろ２０世紀により幅広くかつより深く世界に影響を与えた。１９世紀、京劇は粤劇とともに欧米へ。１９３０年代には欧米の主流をなす社会に進出する。梅蘭芳の米国とソ連訪問は西側の舞台に大きな反応を呼び起こし、西側の現代派演劇の変革を促した。中華人民共和国建国後も、京劇はますます世界的な注目を浴びるようになり、とくにその新時代の到来以降、中国京劇団の世界各地における巡回公演は日常化し、欧米の大学の演劇課程における京劇の舞台稽古も一般化していった。

だが、２１世紀初め、われわれが正視せざるを得なかった事実は、京劇はすでに衰退の道をたどっており、それに関心を寄せ、保護しなければならないということだった。無形文化遺産への登録はもちろん必要だが、より重要なのは、われわれは京劇のために何ができるのか、ということだった。遺産登録は責任に過ぎず栄誉ではない。京劇の栄誉は早くに享有している。私が言いたいのは、それは「無形文化遺産」組織の栄誉であって京劇の栄誉ではなく、京劇はそこから何も得ることはできない、ということだ。逆に、われわれは危機を感じるべきではないだろうか。京劇のような昨日まで最も人気を集めかつ最も影響力を及ぼした古典芸術さえも今では保護を必要としており、われわれの燦然と輝く遺産は、現代の世界においてかなりの速度で風化している。それには真に驚かされる。

幸い、京劇が人類の文化芸術の宝庫に加わることになって、世界はより深く京劇を注目するようになった。われわれの背後には監督、という条例と目が据えられている。祖先の遺産を輝かせる際には、人類の文化への責任と負担に思いを馳せるべきだろう。