人民元の大幅切り上げは問題を解決できない
現在の為替レート摩擦の中で、米国をはじめとする先進国は矛先を中国に向け、人民元レートの過小評価によって、中国が巨額の貿易黒字になり、米国企業の輸出利潤の縮小と、失業の増加を招き、米国の経済回復力が弱まったため、一部の米国人は人民元を引き上げるよう圧力を加えた。
天大研究院のエコノミストの王元竜氏の見方では、中米貿易の不均衡問題をもたらした原因はいくつかある。まず中国の貿易黒字は中米の経済構造と中米間の産業分業の違いによって生まれている。米国のGDP14兆ドルのうち、80%がサービス業で、製造業は約11%である。一方中国の製造業はGDPの60%を占めている。米国が中国との間で行っている協力のうち、貿易を通じたものは4分の1未満で、後の4分の3はサービス貿易分野である。米国の対中国市場の年間サービス貿易輸出額は200億ドルに達しており、米国の銀行、保険、会計士、弁護士業で中国に投資し経営している企業が5万社もあり、中国市場における年間売上高は2200億ドルとなっている。こうした状況は経済構造によるものだ。
また両国の貿易統計方法の違いも要因の1つである。米側の国際貿易統計方法は対中貿易赤字を高く見積もっている。
事実、2005年7月に中国が人民元レート構造改革をスタートさせてから今まで、人民元レートは対米ドルで23.5%上がった。1994年1月から今年7月まで計算すれば、人民元の実際有効為替レートは55.2%上がっている。しかし、中米間の貿易黒字は縮まることはなく、依然として拡大しつつある。
商務部の姚堅報道官は、10月15日の記者会見で次のような考えを示している。中国は貿易黒字を追求していない。金融危機に対応する中で、中国の輸入が拡大しつつある。特に米国、ヨーロッパ、日本、オーストラリア、韓国などの国と地域の輸入の増加率はほとんどが50%前後で、中国のこれらの国と地域への輸出増加率の倍以上となっている。
中国にとっては、当面人民元を大幅に切り上げるための基礎が存在しない。中国は大国としての責任を引き受けるとともに国の受け入れ能力を考慮する必要があるからである。
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