人民元が「過小評価」されているかどうかについて、対外経済貿易大学中米貿易研究センターの何偉文主任に聞いた。
――このところ、一部の先進国は国際決済銀行(BIS)の統計データを持ち出し、これを根拠に人民元の実勢有効レートは下落し、この数年は上昇が緩慢だと指摘しています。米財務省は7月10日、人民元レートは「過小評価されている」とする報告書を発表しましたが、これは事実に合っていますか。
何偉文 そんなことは全くありません。7月15日、BISは6月の主要通貨の実勢有効レート指数を公表し、人民元は118.8と、5月の119.97に比べ0.98%下がりましたが、それは主にユーロや円、ポンドが上昇したことと関係があります。実はそれは、人民元が双方向の動きを呈し、しかも国際市場の変動に沿いつつあることを物語っています。
BISは為替レート指数を算出する際、各国通貨の05年のレートの平均を100に設定しています。それをもとに算出した、今年6月の人民元の実勢有効レート指数は118.8でしたが、それは05年のレート修正以来、累計で18.8%上昇したことを示しています。同月のドル指数は94.31、即ち05年から5.69%下落しました。ユーロは92.59で、同7.41%の下落。円は100.61で、同0.61%の上昇。ポンドは81.38で、18.62%の下落。ここから過去5年間で、人民元の上昇幅が明らかに最大であったことが分かります。
人民元の実勢有効レートは過去5年の間、上昇したり、下落したりしています。最高は09年2月の126.06で、今年6月はこれと比較すると5.76%下落しました。これはなぜでしょう。当時、人民元はドルと連動していたからです。ドルレートも上昇していて、その月のドル指数は99.42でしたが、今は5.24%下落しています。ですから、人民元レートが浮き沈みするのは不可解なことではありません。こうした問題を分析する際には、経緯を遮断することをせず、すべての過程にもとづいて判断することが必要です。
さらに時間がたてば、よりはっきりするでしょう。94年1月の人民元レート指数は75.97、ドル94.21、ユーロ98.05、円とポンドはそれぞれ128.05、90.99。これをもとに算出すれば、この16年間で人民元は56.38%、ドルは0.11%上昇し、ユーロと円、ポンドはそれぞれ5.57%、21.43%、10.56%ずつ下落。言い換えれば、人民元だけが大幅に上昇したことになります。ドルは足踏みし、その他の主要通貨は軒並み下落しました。
こうしたことから、いわゆる人民元レートは、引き下げ圧力により下落し続けている、との批判は、完全に事実に反しており、専門知識にも反するものです。
「北京週報日本語版」2010年8月30日
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