取材対象者:張起
キーワード:民宿、日本の田舎暮らし体験
訪日を終え帰国してから、仕事の後で写真を整理したり、すばらしい瞬間を記録したビデオを鑑賞したりして、訪日期間中の体験を少しずつ回想して味わっている。それはとても心あたたまる心地よい時間だ。
最も懐かしく思い出すのは岐阜県高山市で農家民宿の生活を体験したショートステイだ。山紫水明で、澄み切った水に恵まれた異国の地で、思いがけず故郷の小さな山村に帰ったかのように感じた。私たちは一般の農家の生活に接し、日本の田舎暮らしを体験し、日本の郷土色豊かな文化を堪能し、日本人の親切さや客好きなこと、礼儀に対する尊重を実感した。民宿の主人の指導のもとで、魚の焼き方、餅つき、寿司作りを習い、車座になって独自の特色あるおいしいグルメを味わいながら、心を通わせ、深い友情を結んだ。民宿の主人で、80歳という高齢の稲尾重雄さんは、かくしゃくとして非常に話し好きな方だった。稲尾さんがある訪日団のメンバーの質問に答えた時に話した言葉は、私に忘れることができない深い印象を残した。稲尾さんは「みなさんは私の孫のようなものだ。わざわざはるか遠方からここに来てくれてとても嬉しく思っている。年を取っているか年が若いかを問わず、人はみな気体でいっぱいの風船のように、ずっと情熱と活力に満ち溢れているべきだ」と話した。質朴で飾り気のない言葉には、稲尾さんの人生に対する考えが凝縮され、若い世代に対する年長者の期待が伝わってくる。その席で、私は一枚のスナップ写真を撮った。写真の中の稲尾さんは、目を細めて顔を上に向けており、何かに耳を傾け、何かを考えているかのようだ……この写真をじっと見つめるたびに、強く湧き返る感情、精神の力のようなものが感じられてくる。(本誌記者 繆暁陽)
「北京週報日本語版」2010年7月9日