国民生活にかかわる人民元の貨幣価値
周世倹氏は、「雇用問題は社会の安定と直接的な関わりがあり、これは人民元の切り上げによる最大の脅威である」と語った。
2007年10月19日~2008年7月16日、人民元は7.5元から約11%高の6.8元に達し、中国の対外貿易企業に多大な打撃を与えた。2008年6月、中国南部のある程度の経営規模を持つ対外貿易企業が6万7000余社も破産し、間接的に2500万人の農民工の失業をもたらした。
人民元上昇の機会を利用して中国産業をグレードアップさせ、安価な労働力に頼って低い付加価値の製品を輸出する局面から脱することができると見ている人もいる。これに対して、周世倹氏は次のように見ている。中国の輸出構造は確かに調整やグレードアップを必要としているが、これは長期的な過程で、中国企業に息つぎの時間を与えなければならない。人民元レートが40%急騰すれば、中国の対外貿易は壊滅的な打撃を被り、産業調整の話はもうできなくなってしまう。人民元の切り上げは中国経済の状況に基づくべきであり、産業構造が合理的に調整され、製品の付加価値が高くなれば、人民元は自然に上昇するだろう。人民元レートが毎年3%以内のスピードで緩やかに上昇するのであれば、企業が耐えられる範囲内の苦痛で構造転換ができるが、人民元の急騰は対外貿易企業にとって大地震に劣らない激震である。
周世倹氏の予測によると、米国が4月に発表する為替レート操作に関連する定期報告書で中国を「為替操作国」に書き入れることはなく、最大でも報告の中で中国に警告を出し、「人民元の貨幣価値が甚だしく過小評価されている。中国政府が早急に措置を取るよう求める」と書き入れて、中国政府に対して引き続き圧力を加えるくらいだろう。人民元上昇に圧力を加えるのは米国の交渉手段で、その目的は中国が金融市場と商品市場を全面的に開放するようにさせることにある。オバマ米大統領は5年内に米国の輸出を倍増させ、200万の雇用機会を増やすことを提起した。輸出の倍増は中国市場に依存するところが大きい。米側の考えでは、中国はWTO加盟後市場の開放度が不足し、農産物と穀物などの輸入に一定の制限を加えており、このため、米国は人民元上昇に圧力を加えることを通じて中国が全面的に市場を開放するよう促そうとしている。
「北京週報日本語版」2010年4月9日 |