本誌記者 曾文卉
最近、米国は人民元レート問題について中国に圧力を頻繁に加え、ひいては中国を為替操作国リストに組み入れると脅しをかけている。この問題について、北京週報は清華大学中米関係研究センターの周世倹高級研究員に聞いた。周世倹氏は、人民元レートを米国の要求に基づいて40%切り上げても、米国の現在の貿易赤字問題は解決できず、人民元の貨幣価値は小幅の変動にとどめ、毎年の上昇幅は3%を上回らないようにすべきだとの考えを示している。
比較優位性がカギ
周世倹氏の分析によると、ここ数年人民元レートが上昇したが、中国の対米貿易黒字は今なお増えつつある。これは1つの国の貿易赤字あるいは黒字はすべて為替レートによって決定づけられるわけではないことを意味している。「2005年から2008年までの3年間に人民元レートは21%上昇したにもかかわらず、中国の対米貿易黒字は1142億ドルから49.6%増の1709億ドルに増えた。2009年には人民元は切り上げも切り下げもしなかったが、中国の対米貿易黒字は275億ドル減った。これから見ても分かるように、1つの国の貿易赤字あるいは黒字は一種の市場行為で、人々の意思によって左右されず、すべて為替レートによって決定づけられるわけではない。」
周世倹氏の考えでは、1つの国の貿易黒字を決定づける最終的な要素は比較優位性であるが、中国の比較優位性は安価な労働力である。米最大のスーパーマーケットであるウォルマートの売り場の棚に置かれている商品の60%は中国から輸入されており、これらの商品はすべて米国がバイヤーを派遣して仕入れたもので、中国が強引に売り付けたものではない。米国の要求に基づいて人民元を40%切り上げるなら、米国に輸出される中国製品の価格は値上がりすることになる。そうなれば米国人は中国ではなくベトナムやインドネシア、あるいはその他の発展途上国から靴などを仕入れるようになるだろう。これらの国の労働力コストは米国のそれと比べて、かなり比較優位性があるからである。そのため、米国の貿易赤字が解決されることは依然としてないだろう。過去において米国はかつて為替レート問題を口実にして、相次いでドイツや日本、韓国などの国に「為替操作国」のレッテルを貼ったが、いずれも米国の貿易赤字問題の解決に役立たなかった。
為替レート問題は口実
周世倹氏の見方では、米側が人民元の切り上げへの要求を急いでいるのは、米国の政治家がその高失業率のスケープゴートを探し、中間選挙を勝ち取るために国内の視線を逸らそうとしているからである。現在米国の失業率は高い状態が続いて下げることができず、2009年第4四半期の失業率は10%で、今年の1~2月の失業率は9.7%に達した。実際には、米国の高失業率は経済危機がもたらしたもので、産業構造の問題であり、中国とは関係ない。
このほか、米国が人民元レートの価値上昇を利用して中国経済の発展を抑制する可能性も排除できない。「人民元レートは米国が中国の発展を抑制する切り札である」と周世倹氏は語る。2009年末、温家宝総理は西側諸国を次のように非難したことがある。西側諸国は、一方では対中保護貿易主義を実行し、他方では人民元の大幅な切り上げを強要している。その本質は中国経済の発展を押さえ込むことである。米国がその国内総合貿易法案に基づいて、自国の国内法を国際法の上に置き、他国に為替レートを切り上げるよう要求することは金融覇権主義的な行為である。
周世倹氏は次のように呼びかけている。米国は対中輸出拡大から着手し、特に中国へのハイテク製品輸出に対する制限を解除し、中米貿易をより均衡のとれた方向へ発展させるようにすべきである。それとともに、両国の間に存在する問題について、中米は話し合いを強化し、各種ルートで対話して解決すべきである。
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