人民元切り上げは欧日韓に不利
ハーバード大学で経済史を教えるニーアル・ファーガソン教授は、「チャイメリカ(Chimerica)」という造語で中米の経済関係を表した。中国の必死の生産、米国の必死の消費が、中国の大幅な貿易黒字と米国の大幅な貿易赤字につながった。中国は生産するために世界から多くの原材料を輸入し、米国は消費するために世界から借金している。こうして中国を中心とする世界産業経済サイクルと米国を中心とする世界金融サイクルが形成され、2つのサイクルが世界経済体系の中心となった。
欧州は国際体系の中心であったが、現代の世界経済体系においてはすでに中心から外れている。2009年のEUの輸出入総額は対GDP比でわずか20.9%で、うち輸出額は9.97%だった。これはEU経済の「独自の体系構築」の度合いが「グローバル化」を上回っていることを示している。
EUは輸出全体に占める割合がそれほど高くないが、ハイテク製品においては高い割合を占めている。李暁寧氏は、EUは中国の最大の技術提供者だと話す。中欧経済関係と中米関係で最も異なる点は、米国は中国を「工場」と「市場」と見なし製品を取引することだけを望んでいるが、欧州は中国を協力パートナーと見なし、多くの技術を提供し生産において協力している点だ。携帯電話がその例である。欧州は中国から大量の携帯電話を輸入しているが、実際そのブランドはノキアなどで、すべてが中国で生産されている。ノキアは80年代に中国で研究開発センターを設立し、コア技術を中国に移転した。逆に、米国がiPhoneのコア技術を中国に引き渡すことはないだろう。こういった状況下で、欧州が望むのは人民元の対ユーロレートの安定である。
日本と韓国は欧州と似ており、中国に多くの生産ラインを建設している。中国の輸出の一部は、実は日本と韓国の代わりに行うものであるため、日韓も米国の人民元切り上げに同調する気はない。
中国に原材料を輸出するラテンアメリカや豪州の諸国についても、これらの国の輸入の多くが中国からでなく、米国や欧州からであるため、人民元が切り上がれば対中輸出は減少する。金融危機下でそのような状況になれば、それらの国の経済はさらに深刻な影響を受けることになる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年4月2日 |