人民元レートはおおむね合理的、為替レート改革は穏やかな推進が必要
中国の為替制度改革は穏やかで漸進的な戦略を実行し、誰の目にも明らかな効果を上げている。事実が証明しているように、為替レート制度改革で一気に実現する方針をとらず、穏やかな推進を選んだことは、中国経済の持続可能な発展の促進に役立つだけでなく、世界経済の安定にも役立ち、為替レート制度改革による強い激動や経済秩序の混乱を免れている。
ここ30年来、各国の為替改革は主に以下の二つのタイプに分かれている。①無条件に資本市場の開放を主張する。経常取引での自由な外貨交換を実行するとともに、資本取引においても自由な外貨交換を許可する。政府の為替レート管理規制を取り消し、為替レートが米ドルと連動して市場によって自由変動することを許可する。外貨の自由流通、自由取引を許可する。国有商業銀行の外貨経営の独占を取り消し、個人資本と外資が金融業に進出することを許可し、商業銀行の私有化などを実行する。②本国の実際状況と経済発展のレベル、経済市場化の度合いから出発し、国の経済の安全性と国の中核的利益を守る前提のもとで、穏やかで漸進的な戦略をとる。まずは為替改革のために不可欠な環境と物質的条件を作り出し、経済秩序を整備し、経済を力強く回復、発展させる。市場システムを確立し、それを完備させ、資本市場を秩序正しく開放する。外貨管理規制を緩め、輸出による外貨獲得と外貨留保制度の実行を奨励する。中国の為替制度改革は大体この構想によって進められている。
中国の為替制度改革の進展は為替レートの形成メカニズムの変化に表れただけでなく、人民元の対ドルレートが大幅に上昇した。2005年以降、人民元レートの累計上昇幅は21%に達した。
人民元レート改革は必ず経済の安定性に役立たなければならず、人民元の貨幣価値の基本的安定性を維持するうえで適度に小幅の調整を行う。
現在、人民元の貨幣価値は国内外からの異なる2つの挑戦に直面している。国際市場において、人民元の貨幣価値は切り上げ圧力に直面しているのに対して、国内市場においては人民元切り下げの潜在的な圧力に直面している。その原因は次の通り。
――中国は輸出為替決済制度を実行し、外貨の自由流通を禁止している。企業の輸出による外貨所得でも、外国投資資金でも、必ず国に売却しなければならない。国は公定価格によって人民元を支払う。今、国の外国為替残高は2兆4000億ドルに達し、それに応じて国は約15兆元人民元を増発している。
――ここ数年、貸付については緩和した通貨政策を実行し、特に昨年の貸付額は巨額の9 兆6000億元に達した。これは史上に前例のないものである。このような巨額の貸付額は市場に大きな圧力を加え、回収が至急必要である。
――巨額の銀行の各種預金残高は潜在的な購買力となっている。現在の生産能力が深刻な過剰状態にあるにもかかわらず、この巨額の通貨を吸収できていない。
このため、本来は人民元切り上げがインフレ圧力の解消に役立つはずだが、輸入品の価格が上昇し、為替決済制度が行われているために、必然的に輸入型インフレがもたらされることになる。単に対外的に大幅に切り上げ、対内的には貨幣価値の安定性を守ることは至難の業だ。いったん中国国内市場に深刻なインフレが起きたら、必然的に取り付け騒きを起こし、人民元切り下げが悪循環を生み、その悪影響は予測しがたい。そのため、われわれは人民元の貨幣価値の基本的な安定性を守るという枠組内で、為替レートへの適度な調整を行うほかはない。
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