于祖尭
目下、戦後最も深刻な世界金融危機と経済危機がまだ終わらず、世界の経済回復の将来性は依然として変数に満ちている。危機を誘発した難題はまだ解決されていない。「衰退は過ぎ去った」、「危機をくぐりぬけた」、「世界がポスト危機時代に入った」などと断言するのは根拠不足である。反省を行い、危機の経験と教訓をまとめるべき今この時に、米国の政治家は貿易戦争や為替レート戦争を引き起こそうとし、中米貿易の不均衡の責任は中国にあるととがめ、公然と中国が為替レートを操作していると非難し、一再ならず人民元を切り上げようと何度も圧力を加えた。これらの問題について私個人の見解を述べる。
「為替レートを操作している」のは米国で、中国ではない
中国が貿易大国になり、その発展は国際経済関係の構造を変え、国際経済貿易関係における中国の地位と役割をグレードアップさせたが、経済の実力と競争力について言えば、中国には「為替レート操作」の能力はまったくない。
国際貿易総額に占める中国のシェアは10%前後である。貿易品目の多くは付加価値の低い消費財である。その上、人民元は国際通貨ではなく、流通と備蓄の機能は備えていない。中国は「世界の工場」と呼ばれるが、むしろ「世界の出稼ぎ者」と言った方が更に適切である。中国が「為替レートを操作する」と言うことは、出稼ぎ者が経営者の為替レートを操作すると言うのと同じだろう。中国政府は「為替レートを操作する」客観的な条件を備えていないし、操作しようというつもりもない。
米国政府は毎年自らの標準によっていわゆる「為替レートを操作する」国のリストを公表する。これは米国の国内法を国際法の上に据えるやり方である。「為替レート操作」と言うのなら、今の世界で、為替レートを操作する実力と条件を備える米国を除いて、ほかの国にはおそらくその資格はないだろう。
――米国政府は長期にわたって赤字財政が続いているため、政府は巨額の債務を負っている。米国には財政赤字を補い、政府の運営を維持するための資金源がなければならない。それは、規模が大きく、安定しているが利率の低い債券市場である。債券利率と為替レートは双子のような存在である。
――米ドルが覇者の地位を維持するには、必ず国際通貨の機能を効果的に行使できなければならない。増発した米ドルは貿易赤字を通じて輸出された。米国は第一の貿易大国であるとともに第一の貿易赤字大国である。貿易赤字が巨額なだけでなく、多くの国の債務国でもある。米ドルの紙幣の印刷にはわずかなコストしかかからないが、米国は制限なく紙幣を印刷してはいけない。さもなければ、米国経済は米ドルの乱発のために崩壊することになるだろう。このため、その他のさまざまな有価証券や利率、為替レートなどの経済的テコに頼って米ドルを安定させなければならない。
――米国は世界最大の資本輸出国である。ドルの貸付と投資は資本輸出の重要な形式で、利息は米国の重要な財源の1つである。米国は資本輸出の安全性を保証し、資本の価値保持と価値上昇を実現するため、利率や為替レートのテコとしての役割の利用を重視しなければならない。
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