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元駐日特派員林国本さんの眼  
開けてびっくり玉手箱

 

さいきん、友人から毎月贈ってもらっている中国の日本向け月刊誌「人民中国」2月号を手にして、目からウロコが落ちる気がした。正直言って、私はこういう対外報道のメディアの経営、編集の難しさについて、自信喪失とは至らなくても、イバラの道を行くようなものだと見ていた。したがって、だいぶ前に大先輩からローテーションの話があったときも、私は「士は己れを知る者のために死ぬもの」という古典の一句を引用して、ローテーションを遠慮させてもらったことがある。というのは、雑誌づくりというのは、本国の読者層をターゲットとしてもたいへん難しいのに、ましてや国外のたえず変化し続けている読者のニーズに合わせて雑誌づくりをすることは至難の業と思い、結局「わが道を行くこと」で勘弁してもらった。私が長年お世話になった日本向けの週刊誌も、市場ニーズの変化でネットニュースに変身を遂げているようだが、さいきん、今のトップに「現在のような状況の中で、独立採算制でやっていくのはたいへんですね」と言った。とにかく、前向きによく頑張って、パイオニアスピリットを発揮しているので感心している。私はニーズの変動にもみくちやにされないように、絶えずニッチのターゲットを捉え続け、なるべくオンリーワンに近い存在として無風状態に近い環境で第二、第三の人生を楽しんでいるが、今回、「人民中国」2月号を見て、そのホップ、ステップ、ジャンプに感心し、大いにうならされた。

2月号の企画の33ページまでは、日本のどのメディアも、これほどまとめて取り上げていない、それこそオンリーワンともいうべきもので、風穴を上けた!と拍手、喝采したいくらいである。私ははじめて、同じ企画のところを三度読み返した。時間に追われるワーカーホリックのような暮らしをしているので、雑誌の一企画を三回も読むなんていうことは、私にとっては今年はまだ2回しか起こっていない。ちなみに、もうひとつは日本の「文芸春秋」のマッカーサーとトルーマンに関する読み物だった。

この辺で本題に移ることにするが、「人民中国」2月号の「今中国で何が読まれているか」という企画は中日文化交流の一部をまとめて取り上げたもので、「中国語になった日本の小説」、「日本の作家の読まれ方」などは、よくここまで掘り下げたものだと、自称「老ジャーナリスト・オタク」の私も舌を巻いている。

一般の人たちの間では、欧米の文学作品、あるいはロシア文学の作品が主流だと見られていた中国で、若者の間でこれほど多くの日本の作品が読まれていることを知って、私は自分の勉強不足を痛感している。

余談になるが、先般友人の推薦で中国の若い大学生たちの日本語による作文のコンテストの評議員みたいな仕事をさせてもらったが、中国の若い日本語生徒が日本のアニメに非常に興味を持っていることに、世の中の変化を知った。このうえなく伝統的な考え方の持ち主であった私の友人が、自分の子供が欧米に留学し、永住してしまったので、ものすごい「喪失感」にさいなまれているのではないかと心配していたら、この御仁いわく「これは中国人が進歩したことさ。みんなオレたちのようでは中国は幕末の日本みたいになってしまうじゃないか」とシャーシャーとしているので、私は自分の保守的な考え方を大いに反省させられた。

中国の日本語学徒たちは、石田衣良、林真理子、渡辺淳一、村上龍の作品を読んでいるし、村上春樹などは、ティーンエージャーのあこがれの的になっているようだ。

私は後輩たちに、「非常に進んだ老ジャーナリスト」と言われているが、「人民中国」2月号を読んで、私はわが身の「リストラクチュアリング」の必要性を大いに痛感した。さもなければ、私は恐竜の末路をたどるにちがいない。

「チャイナネット」 2010年3月18日

 

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