私は救いようのないワーカーホリックの一人で、いつも旧正月に近づくと家族との一家団欒のために、子供が私たち老夫婦のために購入してくれた海南省三亜市のセカンドハウスで連休を過ごすことになり、私はノーとは言えないので、毎年航空荷物の重量オーバーにならないよう、本を一冊だけ持って半月精読することにしていた。この年で三亜のエメラルド・ブルーの海を前にした、ゴールデンビーチをアロハシャツ姿で散策するのは私の性格に合わないので、この連休は私のような「変人」にとってはまさに難行苦行であった。でも、今年は国が海南省を国際的にも一流の大観光レジャーアイランドに築き上げるという決定を打ち出したので、そのインパクトはいかなるものや、という老ジャーナリスト「オタク」の好奇心から、すこしは興味を持って出掛けていった。
たしかに、表面的ではあるが、インパクトらしきものを感じることができた。子供の頃の地理の勉強で海南島は中国の台湾に次ぐ大きな島であることは承知していたが、国際情勢や中国全体の発展から見て、かなり発展の遅れた地域だなあ、と常々感じていた。上手に開発すればハワイ以上の集客効果があるのではないか、とも感じていた。真冬の北京からダウンジャケット姿でフライト便に乗り込んで三亜に着く寸前にトイレで半ズボンとアロハシャツに着替えないと、ダウンジャケットのままでは熱帯地方の高気温で卒倒しそうになる常夏の島なのだ。
三亜空港でタクシーでわがセカンドハウスなるものに向かうわけだが、運転手の熱弁で、国際的観光レジャーランドの建設で、不動産の価格が数倍も跳ね上がっているとかいうことも知った。ラグジャリーなホテルがどんどん建てられているし、たしかにこれから大きな変化が起ころうとしている脈動のようなものも感じられた。
しかし、こういう興奮状態は長続きするものではない。本当に必要なことは、地道に海南島を新たに生まれ変わらせるために努力することではないだろうかと考えていた。案の定半ヵ月の休暇を終えて帰途に着く頃には数倍以上に跳ね上がっていたホテルの宿泊料も、もとのモクアミに収まったらしい。そんなに高いのなら、東南アジアの観光をしたほうが安あがりだと言って客足がガタ減りしたかららしい。
正直言って、国際観光アイランドへの変貌は一朝一夕の話ではない。交通インフラ、民度、公衆衛生習慣などすべてランクアップしなければならない。
子供の友人たちとの食事などの機会に感じたことは、改革、開放で先に豊かになった人たちはこうしてリゾートライフを存分に楽しむことができるが、私のような老ジャーナリスト「オタク」は、巷間語られている格差の問題をどのように適切に解決していくのか、ということを常に考えていた。もちろん、こういうことは、地元の政府やシンクタンクの人たちがちゃんと考えていることなどで、私のような観光客がああしろ、こうしろという問題ではないが、私見として述べさせてもらうならば、省民、市民の民度のレベルアップ、インフラ整備、環境保全など課題は山積みしている。
さらには、杞憂かもしれないが、ドラッグなど数々のマイナスな現象の発生も事前に予防しなければならない。さもなければ、バラダイスは汚染されてしまう。こういうことを考えながら、朝日新聞の「天声人語」の文庫本を精読して、半月の「リゾートライフ」を過ごしてきた。
「チャイナネット」 2010年3月1日
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