このところテレビでは、毎日、上海万博のカウントダウンが伝えられている。そして、各国、諸地域の展示施設の完工、ディスプレイの開始、各種設備の運営のための試運転などが順次すすめられている。一部の国の展示施設は環境にやさしい、省エネの時代というコンセプトでつくられたもので、かなり新しい技術もプレゼンテーションされることになっている。
上海万博にとって、今年はフォローの風が吹き始めている。中国経済はGDP8%の伸びを確保し、次の30年に向けて幸先よいスタートを切った。当初、大津波のように押し寄せた国際金融危機の余波も、土俵際で上手にかわし、被害をこうむった一部地域では、一時期工場の操短、閉鎖などで一時帰休者が出たが、それも産業のグレードアップ、製品構造の転換などで上手に乗り切ろうとしている。禍を転じて福となす、という諺があるように、中国は一時帰休者らの職業技能の再訓練で、「帰休」をスキルアップの「学習」に転換する。チャンスに切り換えた。その任に当った人たちにとってはたいへんだったが、ある意味ではいい勉強になったのではないだろうか。市場原理の導入ですべてがうまくいくと幻想を抱いていた人たちにとっても、口には苦がったかもしれないが、「良薬」となったはずである。それやこれやでいろいろ勉強を経たうえで世界じゅうの国、地域が経済発展のノウハウを競い合うコンクールともいうべき上海万博が開かれることになったのだ。そして中国経済の新たな発展というフォローの風が吹き始めている昨今であり、開幕の環境としては申し分けないといっても過言ではない。
さらに加えるならば、北京オリンピックの成功やポストオリンピックの北京経済も、一部外国メディアの悲観的予測とは裏腹に順調な伸びを示しでおり、諸設備の再利用もスムーズにいっている。ボランティアの大活躍という面でも上海万博にとって、いい参考になったはずである。上海はこれまで、さまざまな国際ビッグイベントをこなしてきた。私も何回かお手伝いしたことがあるが、上海の人たちは国際化という面で非常に進んでいるので、私はほとんど心配はないと思う、ただこれまでのビッグイベントはほとんど短期間のもので、一定期間の交通規則ですぐ乗り切れたが、今回は長期間の大イベントであり、海、陸、空から数千万人の人が上海を訪れることになる。会場へのアクセス、ピーク時の柔軟な対応、会場内のレストラン等の食べ物の衛生面での安全、さらにこれまでのビッグイベントのほとんどは大人を対象としたものであったが、今回は家族連れ、高齢者同行といったピクニック気分のお客さんもすくなくないはずである。私は日本の愛知万博を見学したことがあるが上海でも同じ様なにぎわいを目にすることになるわけだ。
上海側のスポークスマンが何度もテレビの映像に映し出され、胸を張って自信満々として発言しているが、私は一老ジャーナリストとして、また、一庶民として、二、三問題提起をおこないたい、1.迷子対策はどうなっているのか。両親や観光団からはぐれてしまった兒童への対策はすでに考慮済みと思うが、これも十分考えておいた方がいい。2.五月、六月、七月となると気温もかなり上昇しているので、外国人を含めて、いまから準備をととのえておく方がよい。3. 上海のスポークスマンの話では、周辺の小都市のホテル等も使うことらしいが、そうなると多方向からの会場へのアクセスが課題となろう。4.VIPは別として、一般の見学者が会場の入り口で長蛇の列をつくることは見苦しい。会場内の各施設における長蛇の列も見苦しい。こうした面でのオペレーション・リサーチはすでにおこなわれているのか。また、いろんな宗教信仰者も訪問客の中にいるはずだ。レストランでの食習慣への配慮は大丈夫か。5.ゴミの処理もおろそかにできない。会場のあちこちにペットボトルがころがっていたりしたら、「国際都市」上海にとっては面汚しである。会場は公園以上に清潔であるべきだ。上海の人たちは、中国北部の人たちより繊細なタイプが多いので、上に述べたようなことはとっくに織り込み済みのことと思う。
さらにもうひとつ、セキュリティにもぜひ注意してもらいたい。なにしろ何万人という人が会場の中を行ったり来たりするウルトラ級のビッグイベントであるので、セキュリティの仕事はたいへんだろう。私はこういう分野はズブの素人でせいぜい日本の推理小説を読んで知った知識の受け売りをする以外に能はないが、要するに盲点を突かれないようにしてもらいたい。
この30年、中国はどんどん発展を遂げている。ごく少数のものにとっては、こういう時にひと騒ぎ起こして、中国のイメージダウンをねらう最後のチャンスとなるかもしれない。主管部門の人たちがシミュレーションを積み重ねて上海万博のセキュリティを確保することを願っている。そして、あえてむずかしい注文をさせてもらうならば、中国語で言うところの「内緊外松(綿密な予測のもとで万全を期するとともに、外部に対してはソフトな感じを与えること)」を達成できれは大成功だろう。外国のメディアに「厳戒」下の万博といわれるのは避けた方がよい。新中国はもう還暦を迎え、 三本の指で数えられる世界の大国である。しかし、どうしようもない場合は別だが。
「チャイナネット」 2010年2月9日
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